第254話 ほんと空気クラッシャーだな!

 オレたち5人は、ひとまずアスタの家――つまり長老の家へと招待されることになった。長老の家は会議などに使用されることも多く、森精霊の家としてはかなり広めに作られているが。それでもちょっと大きめの家程度の規模で、オレが以前住んでいた2つめのログハウスよりも小さい。


「お呼びできる場がこのような場所しかなく、申し訳ありません……」

「とんでもない。こちらこそ突然押しかけてしまって申し訳ないわね」

「そんな……! まさか生きている間にリエンカ家の方々にお会いできるとは思ってもいませんでした。フィーネ様も、おっしゃってくだされば……」

「調査のためにも、自然体のあなたたちを知りたかったのよ」

「ち、調査……」


 フィーネの「調査」という言葉に、長老を始め、アスタや集まってきた各精霊の代表たちも青ざめる。


「ちょっとフィーネ! そんな言い方をするものじゃないわ。……ごめんなさいね。調査と言っても、ラテスの環境の調査のことよ。あなたたちの生活に口を出すつもりはまったくないわ」

「そ、そうでしたか……」

「フィーネはフランクなのはいいけど、言葉が足りないのがね~」


 本当にな!

 その言葉の足りなさに、オレもどれだけ苦戦させられたか……。


「……ということは、ハク様もリエンカ家に仕える神獣ということですかな」

「ああ、いや、以前は正確にはそうだったんですが、今はオレの娘として正式に迎え入れました」

「なんと……ハク様もリエンカ家の一員だったとは。無礼の数々申し訳ありません。いつも何かとご面倒をおかけしていて……」

「い、いえ! 悠斗様のご厚意でそういった形にしていただきましたが、僕が神獣であることに変わりはありませんし、このまま仲良くしていただけると嬉しいですっ」


 ハクは慌ててそう思いを伝える。

 ハクのこうしたぶれない謙虚さは積極的に見習っていきたい。


「それにしても、ラテスの自然はとても美しいわね。草木の隅々にまでエネルギーを感じるわ。あなたたたち精霊がしっかり管理してくれている証拠ね。ありがとう」

「本当、星を所有しているリエンカ家としても鼻が高いわ~」

「き、恐縮です。ですがこれは、ハルト様のお力あってこそです。ここにいる精霊はみな、ハルト様に命を救われた者たちばかりですから」

「ええ。死を待つしかなかった私たちに力の満ちた居場所をお与えくださって、自由にさせてくださって、感謝してもしきれません」


 長老と水精霊の長マリンの言葉に、周囲の精霊たちもうんうんと頷いてくれる。

 ラテスが生き物の発生しない星であったことで、結果として多くの命を救うことができた。

 これは神族としてのオレの大きな自信に繋がったし、今では転生させられた場所がこの星で本当によかったと思っている。


「ふふ、悠斗くんはどこに行っても人気者ね。これは数値が振り切るわけだわ~」

「ハクとフィーネが補佐してくれるおかげですよ」

「――ま、まあ? 私にかかればこれくらい当然かしらねっ」

「フィーネ、あなたねえ……」


 照れをどや顔で押し切ろうとするフィーネに、フォルテがため息をつく。

 そんなオレたちのやり取りを見て、精霊たちも心なしかふっと表情が軽くなったような気がした。


 ――まったく本当、これだからフィーネは。

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