第237話 いざ名門茶会へ

「悠斗様起きてくださいっ! 今日はお茶会に出席する日ですよ」

「――んあ。あ、ハクおはよう」

「おはようございます。あの、お茶会」

「行きたくねええええええ……」

「ええ。だめですよっ! 起きてくださいっ」


 こんなに起きたくないのは人間だったとき以来かもしれない。


「ちょっと神乃悠斗! いつまで寝てるのよっ」

「……いやちょっと頭が痛く」

「はあ? 仮病使う子どもみたいなこと言わないで。私に恥をかかせるつもり?」

「――ぐ。すみません起きます」

「まったく。服はここに置いておくから、さっさと支度してよね」


 フィーネはそう言ってテーブルの上に服を置き、部屋を出ていった。


 はあ。仕方ない。


 重い体に鞭打ってのろのろとテーブルまで向かうと、白いシャツと濃いグレーのベストにズボン、それから縁に金色の刺繍が施された長めの上着のようなものが置かれていた。

 ファンタジーっぽい小説やらアニメやらでよく見る雰囲気のあれだ。

 シャツの首元には、何やらフリルらしきものがついている。


「――まじか。これを着ろと?」

「お手伝いしますか?」

「いやいいよ。ありがとな」


 オレは着替えを済ませ、フィーネが待っている1階へと降りる。


「やっと起きてきたのね。服、似合ってるわよ」

「そ、そうかな。ありがとう。神様って、男女問わずおまえが着てるような白い服を着るもんだと思ってた」

「この服は【神衣】(かむい)っていう特別な服で、これを普段着として着られるのは、上位の名門神族だけなの。まあ、一般神族にはとても手が出せない額っていうのもあるんだけど。君はまだ入りたてだから、普通の服の方が無難だと思うわ」


 そんな特別な服だったのか!

 正直白くて神様っぽいただのワンピースくらいにしか思ってなかった。

 言われてみれば、神界の街を散策した時も、この服を着てる神族はほとんど見なかったな……。

 白い服のヤツはいたけど、冷静に思い返すと何かが違う。


「というかルアンに習わなかったの?」

「まだ勉強中だからな……」


 まあ習ったかもしれないけど。

 でもだからって、それをすべて記憶してられるほどオレの頭は優秀じゃない。


「まあいいわ。それじゃ、行くわよ」

「お、おう」


 フィーネの力で転移した先には、リエンカ家ほどではないが、それでもうちとは比べものにならない大きな屋敷がそびえていた。

 門の前には、5名の天使が立っている。

 どうやらオレたちを出迎えるために待機してくれていたようだ。


「お待ちしておりました。フィーネ・リエンカ様、ハルト・リエンカ様」

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