第236話 引っ越しは完了したけど
午後。
ラテス村付近からずっと西に行った先の島に拠点を移して。
一応、表面上の管理は人族と精霊に委ねた形となった。
「オレがいなくなっても大丈夫、だよな?」
「心配しすぎよ。もっと住民を信用しなさい。ヴァリエとガーネットは、統治に関しては君よりよっぽど本職よ」
「まあたしかにそうなんだけどさ」
ちなみにトリル人の中には元王族はおらず、元王国騎士団団長だったというバルトという男が代表を務めることになった。
バルトは緑色のツンツンした髪型でがっしりとした体格の男で、シオンとは対照的な、どちらかというと明るく社交的なタイプ。
それでいて、団長を務めていただけあって頭も相当きれるらしく。
シオンの猛プッシュによって決まったらしかった。
バルトは最初こそ「俺は君主には向いてないと思うんだが」と困惑していたが、最終的には頭をかき、少し照れながらも国を守ると誓ってくれた。
オレの住む島については、代表3名には一応位置を示している。
だから来ようと思えば来ることもできる。
だが、一応不必要な立ち入りは禁止することにした。
どうしてもという場合のみ、事前に強化ガラス端末で予約を入れて会いに来てもらう形だ。
「――でもそこまでする必要あるのか? オレが行けば一瞬で着くのに。というかいっそ【転移ポイント】を設置しておけば――」
「君、馬鹿なの? それじゃ意味ないでしょ! 名門神族になったからには、ある程度の威厳は持ってくれないと困るわ。なあなあの関係はもうおしまい!」
「……はあ。分かったよ」
フィーネが言わんとすることも分かる。
万が一何かトラブルが発生した場合、オレは星の管理者としてそれを処理する必要がある。
その決断は、必ずしも全員を救えるものではないかもしれない。
だから情で揺れるような関係性は好ましくないのだろう。
「全体との直接交流は年に1回だけ。それ以外にも、住民のためにできることはたくさんあるはずよ。住民が困ったとき、頑張りに応じて奇跡を起こすのも神族の務めだから。もちろん毎回はだめだけど」
「――奇跡、か。オレがここに召喚されたのも、おまえが起こした奇跡だよな」
「――なっ! そ、そうよ! 感謝なさい!」
「……ここで照れて威張れるのすげえな。手違いのくせに」
「手違いだろうと何だろうと、君にとっては奇跡でしょ!? だったら間違ってないじゃないっ! 事実、救済召喚も奇跡の1つよっ」
フィーネは頬を膨らませ、悔しそうにオレを睨みつける。
「まあ心配するな。オレはそんなおまえが好きだよ」
「どんな私よ!? 全然褒められてる気がしないんですけど!? というか君、まだお試し期間中だって覚えてる!?」
「あはは」
――うん。
これからはもっとちゃんと神族として、神様として住民たちを幸せにしていこう。
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