第231話 さすが王様なだけあるってことか?

 翌日、ガーネット、ヴァリエ王、それからトリル人のシオンという男が集められた。

 シオンは普段、辺境で開拓を進めるトリル人の取りまとめ役を担っている。

 そのためとても1日で来られる場所にはいなかったので、ハクが迎えに行くことになった。


 シオンは水色の美しい髪をした切れ長の瞳を持つ青年で、頭脳派として冷静さを欠かない男という印象があったが。

 真っ白い巨大な狼が現れたと思ったらハクに変わり、事情を説明して再び狼に戻る姿を目にした影響か、うちに着いてからも顔色が悪かった。可哀想に。


「ええと……まず3人は全員面識ありましたっけ」

「そこは問題ありません。……でもシオンさん、体調悪そうですが」

「…………だ、大丈夫です。お気になさらず」


 どこか怯えた様子のシオンは、心配するガーネットに笑顔を向ける。

 が、その笑顔はどう見ても引きつっていた。


 応接室には、集まってもらった3人のほか、オレとハク、フィーネが椅子に座り、壁際には天使たちも待機している。


「……ええと。以前皆様に、このラテスには精霊が住んでいると話したと思います。そして領主であるオレは、その精霊たちと契約して力をもらっている、と」

「ええ。そのおかげで私たちも力が使えていますからね」

「領主様には本当に感謝してもしきれません」

「でも実は、それは半分は本当ですが、半分は混乱を防ぐための嘘なんです」


 オレは3人に、自分とフィーネが神族であること、そしてハクは神獣で、後ろに待機しているメイドたちは天使であることを説明した。


「……え、ええと? 本気、ですか?」

「……到底信じがたい話ですが、先ほどのハクさんの姿を見てしまうと」

「ハクさんの姿とは?」


 ガーネットとヴァリエ王がハクに目を向けると、ハクはその場で神獣化して見せた。

 ハクのその姿に。

 ガーネットは「ひっ!」と小さく声を上げて椅子から飛びのき、ヴァリエ王は咄嗟にガーネットの前に立つ。


「心配しなくても、中身はいつものハクですよ。襲ったりはしません」

「……そ、そうか。それは失礼」

「ご、ごめんなさい。びっくりしてつい……」


 みんなが確認したところで、ハクはくるっと回転し、いつもの少女姿に戻る。


「……それで、あなた方は神様で、うしろにいるのは天使だと?」

「そういうことです。まあでもそう簡単には信じて――」

「この地にたどり着いた時、精霊だなんだと言われて、最初は馬鹿にされているのかと思いました。でも精霊は実際に存在した。そしてあなたは、事実あれだけの力を持つ精霊を多数従えている。それならば、きっと本当に神様なのでしょう」


 意外にも、一番すんなりと受け入れてくれたのはヴァリエ王だった。

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