第227話 嬉しいけど空気読めオレええええ

「――あいつ本当、どこ行ったんだ?」


 あのあとリエンカ家へ行ってみたが、フィーネはそこにはいなかった。

 オレは神界の地理には詳しくないし、フィーネが行きそうな場所もまったく分からない。


 ――くそっ!

 せめて昼だったらもっと探しやすいのに!!!


「ハク、何か心当たりはないか?」

「……念のため、スキル【探索】で探ってみてはいかがでしょう? ラテスにいらっしゃるのであれば、フィーネ様が意図的に隠れてなければ引っかかります」

「そうだスキル!!!」


 本当、こんな時に使わなくてどうするんだ。

 混乱してそっちに頭が回らなかった……。


 スキル【探索】でラテス内を探ると――


「いたああああああ!!!」

「おおお! よかったですっ」


 フィーネはラテスに来て最初に出会った川の近辺にいるようだった。


「ちょっと行ってくるよ。ハクは留守番しててくれ」

「はい。いってらっしゃいませ」



 川へ向かうと、フィーネは川に面した大きめの岩の上に座っていた。

 風に吹かれながら、ただぼーっと川の方を眺めている。


「……フィーネ」

「……なに追ってきてるのよ」

「頼むから話をさせてくれ。いったい何に怒って何に泣いてるんだ」

「……べつに怒ってないし泣いてないわよっ」


 フィーネはふいっとオレから顔を逸らす。

 今、時刻は深夜の1時を過ぎている。

 そのうえ村から少し離れた位置にあるため、周囲に灯りはなく。

 空に見える大量の星と大きな月が、フィーネの美しい金髪をキラキラと輝かせていた。


 ――綺麗だな。まあ正確には月ではないんだろうけど。


「……君、ガーネットにリエンカ家の配下に下ったって言ったそうね」

「――ん? え?」


 いや、そんなこと言ってないんだが???


「身寄りのない、星すらうちのを使用してる君にリエンカ家が声をかけるのがどういうことか、私だって理解はしてるわ。君の立場を考えれば、君の行動を責めることはできない。……だからただ、私が浅はかだっただけよ」

「いや、ちょ、待てって」


 というか前世も親に頼って生きる歳でもなかったし、身寄りがないって発想はあんまりなかったな!


「……本当は、君の告白とても嬉しかったのよ。立場上、応えることはできなかったけど。でも一般神族みたいに個人同士で勝手に付き合えたらどんなにいいかって思った。誰かに告白されてこんな気持ちになったのは初めてで、自分でも驚いたわ」


 ……ええええええ。

 オレは今、何を聞かされてるんだ?

 正直嬉しさで顔がにやけそうなんだが!?

 いやでも、どう考えてもそういう空気ではないよな……


 とりあえず、ガーネットさんとの会話で何か勘違いが起こった、というところだろうか?

 配下ってのは、オレがリエンカ家に入ることになった件か?

 そういやガーネットさんにそんな話をしたような……。

 でも配下に下ったなんて言い方はしてないぞ???


 このままフィーネの愛の告白(?)を聞いていたい気持ちもあるが、こいつの性格から考えてそれは可哀想というものだろう。


「――よーし分かったありがとう。いったん話を整理しよう」

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