第228話 和解
「……どういう意味よ。というかありがとうって何」
フィーネは自分の発言がどう捉えられているかにまったく気づいてない様子だ。
それにしても今さっきの発言、録音しておきたかったな……。
「言葉の通りだよ。よく分からないけど、おまえなんか勘違いしてるぞ。まず、オレはガーネットさんに、リエンカ家に入ることになってるとは言った。が、配下に下ったとは言ってない」
「…………は?」
オレは、フィーネにあの日の経緯を説明した。
「…………呆れた。君、バカなの?」
「え、なんで」
「君はここの領主ってことになってるんでしょ? リエンカ家に入るなんて言い方したら、そう取られたって仕方ないわよっ!」
「――あ。なるほど」
領主って都合上適当に言っただけだし、正直深く考えてなかった……。
この間のガーネットさんのあの反応はそういうことか。
「でもあながち間違ってもないだろ。もちろんそんなふうに思ってるわけじゃないけどさ。なんでおまえがそんな怒ってるんだよ」
「そ、それはだって、君が――っ」
「?」
フィーネはそこまで言って黙り込み、ふるふると震えながら真っ赤になってうつむく。
「き、君がリエンカ家を領地を奪った悪者みたいに言うからよっ!」
「それは……うん。本当に悪かった。ごめん。自分の家が悪く思われたら嫌だよな。ちゃんとガーネットさんの誤解も解くから」
「それに……」
「うん?」
「…………。何でもないわ。君の私への気持ちは、信じてもいいのよね?」
うん? 告白のこと、だよな?
「当然だろ。いくらオレでも冗談であんなこと言わねえよ。前世も含めて、人生初の告白だぞ」
「……それならいいわ。今回はもう許してあげる」
「お、おう。ありがとう」
フィーネは困惑しているような、でも少し心に余裕ができたような、複雑な表情をしていた。
相変わらず顔は耳まで真っ赤だったが。
――にしてもそうか。
まさかそんなふうに思われてたとは。
ガーネットさんにも悪いことしたな。
明日、仕事前に謝りにいこう……。
「……そろそろ帰ろうか。もう遅いし、寝ないと体に悪いぞ」
フィーネを連れて戻ると、玄関付近で待機していたハクが走ってきた。
帰りが遅いのを心配していたらしい。
「おかえりなさいっ。温かい飲み物を用意しますねっ」
ハクは事情を聞くこともなく、そのまま家に入るとキッチンの方へと向かう。
本当に、どこまでもできた子すぎて逆に心配になってしまう。
神獣ってのはみんなこうなんだろうか?
「ハク、ありがとな」
「! いえ、フィーネ様が無事見つかって、和解もできたみたいでよかったですっ」
「いつも気を遣わせて悪いな。お茶はオレが淹れるからゆっくりしてていいぞ」
「そんなっ! 悠斗様はフィーネ様を探しに行かれて疲れてるでしょうし、明日もお仕事ですし、僕がやりますよっ!」
「そ、そうか? じゃあ……」
ううむ。
オレも親としてもっとしっかりしないと。
オレとフィーネ(予定)が親じゃ、こいつも苦労するだろうな。
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