第225話 ガーネットの誤解【3人称】
悠斗とハクが出かけたあと、フィーネは家で1人ゆっくりしていた。
仕事でリエンカ家に戻る時間まで、あと3時間ほど余裕がある。
「ラテスも本当に充実してきたわよね……。ただのセール品だったあの星と同じとは思えないわ」
ラテス村もエクレアも、そしてトリル人たちの開拓村も、今のところこれといった問題もなく順調に進歩していっている。
最近は、悠斗が構築した大自然にもだいぶ人族の手が入り、文明が発展していくのを日々観察している段階だ。
ここまできたら、星としては「安定期」とみなされる。
あとは住民たちがそこでどう生活し、行動し、文化を発展させていくか。
つまり、神族の意思とは関係なく動いていく事象が多くなる。
「神乃悠斗のやり方が吉と出るか凶と出るか……。まあ初めて管理する星なんて失敗して当然だし、最悪神罰で更地にしてしまうか、もしくは星を手放すって手もあるんだけど――でも、神乃悠斗はラテスをとても大切にしてるからね……」
うまくいってほしい、と、フィーネはそう思った。
自分にできることがあるなら協力するつもりだし、そのためにさぼらずに情報収集も進めている。
でも、人族という不確定要素をうまくコントロールできなければ、星というのはあっという間にダメになってしまう。
「――はあ。姉様たちなら、もっとうまくサポートするんでしょうね」
そんなことを考えていたその時。
悠斗の屋敷にガーネットがやってきた。
「えっと……今、神乃悠斗は留守なのよ。私でもよければ話は聞けるけど」
「え……」
ガーネットは明らかに動揺した様子でうろたえる。
が、しばらく考えたのち、意を決したように口を開いた。
「……あ、あのっ、フィーネ様にお話したいことがあります。少しお時間いただいてもよろしいでしょうか」
「? 私に? 2時間くらいだったら構わないわよ。あがって」
「ありがとうございます。失礼します」
フィーネはガーネットを応接室へ案内し、お茶の用意をして自分も席についた。
「――それで、私に話って何かしら」
「……あ、あの、今後、ラテスはどうなるのでしょうか?」
「? どうなるって?」
「……領主様の家がリエンカ家の配下に置かれることになった、と伺いまして」
「……え!? 配下? ……え、ええと、まあ実質あながち間違ってはないけど、でもうちはべつにそういうつもりじゃ……。それ、神乃悠斗が言ったの?」
「え――」
フィーネの反応に、ガーネットは口外してはいけないことだったのかもしれないと焦りを見せる。
「あ、違うのよ。べつにそう言ったなら言ったでいいの。実際、うちも少し強引だったと思うし、そもそも私は元々あまり賛成ではなかったし」
「……言葉は違ったかもしれませんが、そのようなことをおっしゃっていたと記憶しています」
「……そうなのね。正直に話してくれてありがとう。話を戻してラテスのことだけど、ラテスに対してうちが何か圧力をかけるとか、支配を強めるとか、そういうことは一切ないと約束するわ。心配させてごめんなさいね」
不安そうな表情を浮かべるガーネットを安心させるように、フィーネは笑顔でそう約束した。
その言葉に、ガーネットはいくらか安堵した様子で頭を下げる。
「あ、ありがとうございますっ! こちらこそ、突然失礼なことを――申し訳ありませんでしたっ」
「いいえ。ラテスのこと、引き続きよろしく頼むわね、いつも丁寧な仕事をしてくれて助かるって、神乃悠斗が話していたわ」
「! そ、そんな……! 領主様がいなければ、私たちは今頃どうなっていたか。その恩義に比べれば、私のしていることなんて――」
謙遜しながらも、一気に赤面してしどろもどろになるガーネットを見て。
フィーネは――
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