第224話 神獣にかけられている制約

 週3日の授業と訓練を受けるようになってから、約1ヶ月。

 最初は翌日まったく動けなかったが、少しずつ体が慣れて、次第に神様活動をする余裕も生まれだした。


「だいぶ体力ついたみたいね。どうせすぐに音を上げると思ってたから驚いたわ。すごいじゃないっ」

「元社畜を舐めるなよ。ノルマに従うのは大の得意だ」

「……それ、自慢げに言うことかしら」


 フィーネに憐れみすら感じるジト目を向けられ、どうせならもっとバッサリつっこんでくれ!と心の中で叫ぶ。

 オレだって好きで社畜体質なわけじゃねえ!!!


 でも最近、体が軽いというか、以前から時折感じていた力を使ったあとのだるさがなくなったように思う。

 あれ、仕方がないことだと思ってたけど、単にオレの体力が足りてなかったのか。

 やっぱり、常日頃から自分でも動かなきゃだめだな。


「今日は休みだし、久々にラテスの探索でもするか」

「はいっ!」

「フィーネはどうする?」

「私は遠慮しておくわ。今日は午後から仕事で家に帰らないといけないのよ」

「そうか。じゃあまた行ける時に」


 オレとハクは、準備をして2人でラテス探索へ出かけることにした。


「……あれ? 今日は乗らないんですか?」

「あー、今日は自力で飛行するよ」

「……僕が相手であれば、フィーネ様もやきもちは焼かないと思いますよ」


 そうじゃねえ!!!


 というか、オレのフィーネへの思いがハクにバレてるってなんか気恥ずかしいな。

 なんでバレたんだ……。

 ハクって普段無表情だしあまりそういうの考えないと思ってたけど、案外周囲のことよく見てるよな。


「いや、ええと……戦闘訓練受けてて思ったんだよ。いつもハクに頼りっきりだから、オレ体力ないなって。だからもっと体力つけたくてさ」

「そうだったんですね。それなら仕方ないです……」


 ハクは少し残念そうだったが、序盤のオレの体力のなさを目の当たりにしていたためか比較的あっさりと引き下がってくれた。


「……そういえば、ハクって力めちゃくちゃ強いよな」

「えっ? そう……ですね。僕は神獣ですし、そう作られてますからね」

「オレとハクが戦ったら、やっぱオレ瞬殺かな」

「まさか! 神獣は所有者に手を出せないようになってるので、僕は悠斗様には何もできませんよ。そんなことしようものなら、神罰が発動して大変なことになります」


 ――え。


「神罰って、あのファニルさんに発動したやつか?」

「はい」

「え……でもオレ、そんなスキル使ってないんだが」

「創られる段階で暴走防止策としてシステムに組み込まれてるんです。僕は元々アイテムですから」

「そんな……」


 養子として、娘としてオレが正式に引き取れば、ハクはそういうしがらみから解放されると思っていた。

 なのに。


「それって解除できないのか?」

「それは無理じゃないでしょうか……。神獣は強い力を持ってるので、管理も厳重なんです。無理に解除しようとすれば、多分死にます」

「……気づいてやれてなくてごめん」

「えっ? 僕は今の状態が好きですよ。この契約は、悠斗様が絶対的に僕の主だっていう証拠でもあるので」

「な、なるほど!? まあハクがいいならいいんだけど……」


 力を持っているがゆえに慎重にってことなんだろうけど。

 でも、ハクに無理させないよう気をつけないとな……。

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