第222話 満身創痍な休日

「…………か、体が重い。痛い」

「ちょっと大丈夫? 母様も、突然父様を相手にさせるなんて何考えてるのかしら」

「湿布買ってきました!」


 戦闘訓練の翌日。

 オレは見事に全身筋肉痛になり、力尽きて動けなくなっていた。

 今日は神様活動に精を出す予定だったが、とてもそんなことができる状態じゃない。


 ――昨日早めに寝たはずなんだけどな。

 途中から制御とか調整とか考える余裕もなくなって、ほぼ全力だったしな。

 たぶんまた神力の使いすぎか……。


「シルヴァさんに話したら、体力回復に効果的なお茶をいただいたんです。淹れてきますねっ」

「あ、ああ、頼む……」


 ハクは心配そうにしながらも、パタパタと走り去った。

 たった1日の訓練でこんなに疲弊してしまうなんて、情けなくて泣きたい。

 普段、移動やら力仕事やらはハクに任せることが多いからな……。


「……この間認めさせるって言ったばっかなのに、こんなんでごめんな」

「べつに最初から君に戦闘能力なんて期待してないわよ……」

「でも、いざという時に守れないのは――」


 嫌だ。と言いそうになって慌てて自制する。

 フィーネにそんなことを言えば、一生からかわれるに決まってる。

 どうやら疲労で脳がやられているらしい。危なかった。


「――はあ。あのねえ、うちは戦闘特化の家系じゃないし、そんなのは最低限でいいの。父様がおかしいのよ。父様、神界守護を司る一族に弟子入りしたことがあるの。そんなの相手にどうにかなる方がおかしいわ」

「その神界守護を司る一族とやらはそんな強いのか?」

「戦闘であの一族の右に出る者はいないわね。あそこは神族としてかなり異質な家系で、普通の神族はあまり関わろうとしないんだけど。父様は昔、突然出向いていってしつこく頼み込んだらしいわ」


 ま、まじか……。

 まあバースさん、メンタル強そうだしな……。


「……オレ、なんでそんなのと戦ってるんだ?」

「さあ。こっちが聞きたいわよ。とにかく無理はしないこと! いいわね」

「お、おう……」


 まあ、とは言っても明日も訓練なんだけどな!

 正直逃げたい。


「そういやバースさんが、多すぎる神力は体が弱いとマイナス要因になるって言ってたんだけどさ。これってどういうことなんだ?」

「――え? ……さあ。神力って高ければ高いほどいいものじゃないの?」


 フィーネはぽかんとして首をかしげている。

 どうやら本当に分かっていない様子だ。


「……まあそうだよな。おまえに聞いてもな」

「ちょ――はあ!? どういう意味よっ! そんな規格外の力持ってる神族なんてそうそういないんだから、知らなくても仕方ないでしょ!?」

「あははごめん、うっかり本音が」

「~~~~っ! 君、本当に私のこと好きなの!?」


 ぷくっと頬を膨らませ、顔を真っ赤にして睨みつけてくる。面白い。


「あれだよ、好きな子のことはいじめたくなるってよく言うだろ」

「そんなの知らないんですけど!? どこの常識よっ!」


 あれ、神界ではメジャーな感情ではなかったらしい。

 まあいいか。


 とにかく今はそんなことよりも。

 早く回復してくれオレの体力!!!!!

 つらい!!!!!

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