第216話 ドキドキな前夜

 リエンカ家に入る手続きを終えて、オレは正式にリエンカ家の一員となった。

 部屋は以前与えられていた場所をそのまま使うことになり、オレに仕えてくれる専用の天使も2名あてがわれた。


「今日からハルト様にお仕えさせていただきます、エルと申します」

「か、カロンと申しますっ」

「エルとカロン、これからよろしくな」

「はいっ! よろしくお願いいたします」

「よろしくお願いいたしますっ」


 エルもカロンも、さらさらの金髪に金色の瞳を持つ愛らしい天使で。

 エルはそれなりに側仕えとして慣れている様子だが、カロンはあまり慣れているようには見えない。後輩のような立場なのだろうか?


「先ほども説明したと思うけれど、ラテスにある神殿の一室を、うちの悠斗くんの部屋と繋げることにしたわ。そしてフィーネの部屋も同じように繋げました。何か用事がある際には、エルかカロンが呼びにいくと思うから」

「分かりました」

「それから、一応ラテス側の天使にもうちの研修を受けさせてもらえると助かるわ。今度連れてきてちょうだい」


 こうして今後の方針ややるべきことの説明を受け、ようやくラテスへ戻る頃には夕方になっていた。

 フィーネとハクは一足先にラテスへ戻っていたようで、帰宅すると2人が出迎えてくれた。


 ――フィーネに話がしたかったけど、もう夕方だしな。

 これから夕飯食っていろいろしてたら時間ないか。

 仕方ない。明日にしよう。


「フィーネ」

「うん? ああ、そういえば君、何か話があるって言ってたわよね。何かしら」

「え、あ、いや……」


 こいつ本当、こんな時くらい空気読んでくれても……。

 ……はあ。でもまあ、こういうとこも含めてフィーネだよな。


「おまえ明日って暇か?」

「明日? そうねえ、明日は午後なら空いてるかしら」

「その――ちょっと付き合ってほしいところがあるんだが」

「私に? 珍しいわね。まあべつにいいけど」


 ――よっし!!!


「じゃあ明日、12時ごろ出かけよう」

「分かったわ。ハクも行くでしょ?」

「えっ! あ、いえ、僕は留守番しています。その、明日はちょっと予定が」


 え。

 えええええええええええ!

 ハクが空気読んでる……だと……!


「そう。なら仕方ないわね。それより何か食べましょう。もうおなかペコペコだわ」

「そ、そうだな。そういやオレも、朝食ったっきりだ」

「僕、何か作ってきますねっ」


 去り際、ハクはフィーネが見ていない隙に、オレに向かって「頑張れ」という顔で親指を立てた手を突き出す。

 ああ本当、なんていい子なんだ……


 よし、こうしてハクも応援してくれてることだし。

 明日は頑張るぞおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!

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