第10章 ランクA リエンカ一族としての生活

第215話 帰還と歓迎

 クリエとリールの悪意のない羞恥責めからようやく解放され、おれはクリエとともに久々にリエンカ家へ向かうことになった。


「フィーネとハクも呼んであるわよ~。早く会いたいでしょ?」

「そうですね。あの2人には、ずっと助けられてきましたから」

「ふふ、助けられたのはフィーネの方かもしれないけどね~。あの子、ラテスで暮らすようになってからとっても楽しそうだもの」


 クリエは楽しそうに笑う。

 クリエも、何だかんだでフィーネの行く先が心配だったのかもしれない。


 リエンカ家へ到着すると、ハクが飛びつくように抱きついてきた。


「うお!?」

「悠斗様、おかえりなさいっ! おめでとうございますっ!」

「ただいま、ハク。ありがとな。なんだもう知ってるのか」


 ハクがこうして遠慮なく甘えてくれるようになったのはとても嬉しい。

 少しは父親らしくなれてんのかな……?

 いや、飼い主か?

 まあどっちにしても、ハクが幸せならそれでいいか。


「おかえり。合格、したのよね?」

「ただいまフィーネ。ああ、おかげさまでどうにかな」

「おめでとう。本当にすごいわ。転生者がランクAになるなんて、こんな事例聞いたことないもの」


 フィーネは心の理解が追いつかないのか、何やら呆然とした様子だ。

 しかし、声の様子から興奮していることは伝わってきた。

 フィーネからしてみれば、オレは自分が手違いで召喚してしまった転生者だ。

 たった数年でこんなことになるなんて思いもしなかったのだろう。


「ありがとう。……それで、あとでちょっと話があるんだけど」

「話? 私に? 何かしら」

「ラテスに戻ってから話すよ」

「? そう? 分かったわ」


 話が一通り落ち着いたころ、フォルテとバースがやってきた。

 うしろには、リンネとルアン先生もいる。


「カミノハルトくん! 昇格試験、合格したそうだね! おめでとう! これで晴れてうちの一員だね。いやーこの日を心待ちにしていたよ。でも君ならやってくれると信じてたよ。はっはっは!」


 バースさんは相変わらずテンション高いなっ!!!

 まあ嫌いじゃないけど!


「悠斗くん、改めて本当におめでとう」

「おめでとう。……天才に努力されたんじゃ、勝ち目なんてないわね」

「おめでとうございます」


 いつもは怖いルアン先生も、今日は優しい笑顔で祝福してくれた。

 リンネも、若干悔しそうではあったが受け入れてはくれそうだ。

 リエンカ家で虐げられる道は回避できそうでよかった……。


 周囲には天使たちもいて、笑顔で祝福してくれた。

 ランクB昇格試験審査期間中に一緒だったリリアとティアもいる。


 ……ああ、本当に。

 本当にやったんだな、オレ。

 努力が報われるって、こんなに嬉しいことなのか。

 諦めずに頑張ってよかった。


 みんなに笑顔で迎えられ、昇格を改めてかみしめて。

 胸の内から熱いものがこみ上げ、思わず目頭を抑える。


「本当に頑張ったわね。改めて、ようこそリエンカ家へ。早速手続きを進めましょうか。こちらへ。バースもよ」

「もちろんだとも☆ ああ、嬉しいなあ。初めての息子かあ!」

「ちょっと、天使の前であまりはしゃがないでちょうだい。みっともない!」

「いいじゃないか。フォルテだって嬉しいくせに☆」

「それとこれとは別です!」


 ――フォルテさんとバースさんって、何だかんだでいい夫婦だよな。

 オレもこんな関係を作って行けたらいいな。

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