第211話 残り2日ないというのに……

 森の奥深くまで探索した結果。

 岩塩、砂糖、唐辛子、コンソメ、和風だしの素、醤油、蜂蜜、味噌などを含むさまざまな調味料が手に入った。

 ほかにも恐らく香辛料だろうと思われるものがいくつかあったが、その辺は詳しくないため詳細は不明だ。


「――って調味料集めてどうすんだオレええええええ!!!」


 いやまあ画期的ではあるけど!

 ラテスにもこんな洞窟欲しいってちょっと思ったけど!!!

 でも今欲しいのはこれじゃねええええええええ!!!


 くそっ……

 これじゃ2日目も無駄に使ったことに――


 ――いや、待てよ。

 もう1つあったな。最初に池の周辺で採取した透明の水晶みたいなやつ。

 これは味は――しない!!!


 ということは。

 神鉱石の育成に役立つ可能性があるとしたら、恐らくこの鉱石だろう。

 だが、オレは鉱石の研究なんてしたことないし、その方法も分からない。

 光に透かしてみたり削ろうと試みたりしたが、どちらもこれといった成果はなかった。というか、硬くて削れなかった。


 今、手元にあるのは5つ。

 しかもこの岩の隙間に生えていた鉱石はどれもとても小さく、一番大きなものでも直径1㎝、長さ5㎝程度だ。

 実験に使うには、万が一のことを考えるともう少し量がほしい。


「――はあ。仕方ない。明日もう一度取りに行くか」


 オレはその調味料な鉱石は食材を置いている辺りに、水晶(仮)はテーブルの上に置き、ここでの日課となっている湖への神力注入に向かった。

 2日目も、特にこれといって何も起こらなかった。


 3日目、4日目、5日目も、同じように探索や調査をしながら過ごした。

 が、これといった成果は得られずにいた。

 ほかの場所で見つけた鉱石も、9割は調味料や香辛料の類で。

 残りの1割は2日目に見つけた水晶(仮)と同じと思われるものだった。


 そして水晶(仮)に神力を込めると一定までは輝きが増すが、込めすぎるとあっさり砕けてしまう、ということも分かった。

 これでは神鉱石の材料としては使えないだろう。


 神力注入も、毎日2回行なって水質が若干変わっている気がするものの、イマイチよく分からない。

 ちなみに、3日目に元いた小屋に風呂があったことを思い出し、3日目以降は風呂はそこで入るようになった。

 やっぱりあったかい風呂は最高だ。


 そして6日目の昼過ぎ。

 オレはだいぶ焦っていた。

 考えてみたら、神様に転生して以降、困った時は常にハクがアドバイスをくれていたし、重要な局面には大抵フィーネもいた。


 ……いや、いたかな?

 まあそれは今はいいか。


 自分で考えて動いたこともそれなりにはあったが、それはスキル【神様】や【理の改変】というチート能力があったからできたことで。


 つまり。


 ――あれ、今のオレってただの無能じゃね?


 というとんでもない事実に気づいてしまったのだ。

 チート能力をなくしてしまえば、オレはただの元社畜だ。

 これといった特別な才能も、知識も知恵もない。


「……え、こんなんでランクAの神族になるとか、そもそも無理なんじゃ」


 というか、なっても迷惑かける予感しかしない……。

 リエンカ家の名に傷をつける前に辞退した方がいいのでは?


 そんな気持ちが浮上して。

 残り2日ないというのに、オレは動けなくなってしまった。

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