第209話 とにもかくにも暗中模索!

 実技試験2日目。朝8時。


「……んん。ん?」


 ――あ、そうか、今試験中で【試験用惑星】にいるんだっけか。


 見慣れぬ天井に状況が分からず混乱しかけたが、窓から見える景色で自分が今試験中であることを思い出した。

 こんな状況で熟睡していた自分に呆れる……。


 オレはベッドから起き上がり、顔を洗うために湖へと向かった。

 湖とログハウスは数十秒もかからない距離にある。

 ドアを開ければすぐそこだ。


「――変化はなし、かあ」


 昨日神力を流し込んだことで何か変化が起こっていれば――と淡い期待をしていたのだが、さすがにそんな簡単ではないようだ。


「さて、今日はどうするかな」


 顔を洗って部屋へ戻り、昨日もいでおいた果実をいくつか朝食にする。


「ラテスみたいに、オレの力と星の力を融合できればなあ。フォルテさんは、訓練次第でほかの星との融合も可能かもしれないって言ってたけど……」


 ラテスとの融合はフィーネが何やかんやした結果であって、今のところオレの意思で再現できるものではない。


 ――なんかこう、神力を結晶化する力とかあったり?


「ふんっ――ぬっ――っ! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 オレは大事なものを包み込むように手のひらを合わせ、そこに神鉱石を出現させるという戦法を試すことにした。

 結果。


「っぜぇ、はあっ……む、無理……っ」


 我ながらこんな厨二病全開な行動に出たことが恥ずかしくなり、心身ともにダメージを負うこととなった。

 いやまあ、べつに誰が見てるわけでもないけど。

 ……見てない、よな?


 くそっ! ラテスなら欠片くらいは作れたかもしれないのにっ!!

 知らんけど!!!


 あとは――なんだ?

 何かオレにできそうな、神鉱石が作れそうなこと……。


 しばらく湖の周辺をうろうろしながら考えたが、結局いい案が浮かばず、昨日と同じ方法で湖に力を注いでおくことにした。


 午後からは、再び森の探索。


「昨日より奥に行ってみるか。何かヒントがあるかもしれないし。もしかしたら神鉱石が見つかるなんてことも――」


 森はだいぶ奥まで続いているようで、なかなか終わりが見えてこない。

 奥へ行けば行くほど木が鬱蒼と茂り、岩や木の幹は苔で緑に染まり始めた。


「昼間だからいいけど、ここまで深い森だと夜は通りたくないな。早めに切り上げて折り返そう……」


 一応、生き物はいない様子ではあるけど。

 でも絶対にいないとも言い切れない。

 万が一モンスターやら魔獣やらが出てきたらたまったもんじゃない。


 とはいえ、昼間通る分にはなかなかの絶景だった。

 年数を感じさせる木の幹のうねり、倒木、朽ちた木々を養分にして生きる雑草など、ラテスでは意図的に作り出すしかなかった憧れの光景が目の前に広がっている。


「こういうの、いいよな……」


 しばらく行くと、岩場の隙間からチョロチョロと水が流れている場所を発見した。

 辿っていくと、巨大な岩が積み重なってできた崖から綺麗な水がとうとうと流れ落ち、小さな池を作っている。

 水に手を入れると、冷蔵庫から取り出したての水のごとく冷たかった。


 これはもう、飲むしかないな!


「――うっっっま!」


 だいぶ歩いていたこともあってか、体にひんやりとした水が染み渡る。

 ひと口飲むごとに、力を回復してくれる気がした。


「――――ん?」


 水が流れ落ちるあたりの少し横で、何かがキラッと光った気がした。


「なんだ? 神鉱石――ではなさそうだけど」

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