第208話 実技試験初日とは思えない1日

 神鉱石を生み出す方法を考えようかと思ったが、時間が時間だったため、先に夕飯にすることにした。

 腹が減っては戦ができぬって言うしな。


「にしても、コショウの実と岩塩が手に入って助かった。じゃなきゃ7日間味のしない食事になるところだった……」


 ちなみに今日の夕飯は、玉ねぎ、トマト、にんにく、肉の実(鶏肉)をスープにし、ふかし芋を主食にした。

 我ながら、ある食材を活用しての調理にも本当に慣れたなと改めて思う。


「こうやってサバイバル飯っぽいことすんの久しぶりだな。ラテスに転生してすぐは、よくハクと一緒にこういう飯作ったな。というか肉の実ってこんな普通にあるもんなのか……」


 久々の肉体労働で疲れていたのか、野菜の出汁がたっぷりのスープとほくほくほろっとほどける芋の食感が体にじんわり染み渡る。

 そして体の力がふっと抜けていくのを感じた。


 ――あれ、オレ案外緊張してたのか?

 まあ何だかんだで、今まではずっとハクがいてくれたしな。

 こんな誰もいない星に1人って、なかなかに――


 まあでも。

 たまにはこういうのもいいかもしれない。

 転生してから――というか転生する前も、こうして1人でのんびり過ごす時間なんてほとんど取れなかったしな。


「……とりあえず湖で体洗って、それから洗濯し――って着替えがねえええ!」


 くそっ、仕方ない。

 1人だし、【炎】と【風】で乾かせばどうにかなるか。


 ――監視カメラ的なものがないことを祈ろう。


 オレは湖で洗濯と風呂を済ませ、服を乾かして部屋に戻った。

 湖の水は思ったほど冷たくなく、ぬるいお湯くらいの温かさはあった。

 不思議なこともあるもんだ。


 そうこうしているうちに時は過ぎ、あっという間に夜が更けていく。


 …………。


「いやいやいやいや。オレいったい何してんだ!? 今日やったことって、星の探索と家づくりと食料の確保だけじゃん。今試験中だぞ!? 神経図太くなるにも程があるだろ!!!」


 まずい。まずすぎる。

 試験に受からなかったら、フォルテさんやルアン先生を失望させてしまう。

 それにハクやフィーネも――。


 オレはとりあえず部屋から出て、湖の前に立つ。

 湖は、木々の隙間からわずかに見える月の光や星の輝きが映し出され、明るい時間帯とはまた違った幻想的な光景を作り出していた。


 ――よし、やるか。


 地面にひざをつき、湖に両手を差し入れて力を注いでみる。

 力の制御もある程度はできるようになったし、時間を決めてやっていけば倒れることもないだろう。


 しばらく力を注ぎ続けると、湖の表面がうっすらと光り出した。

 まあ、光ったから何だって話なんだけど。


 でもこの周辺の植物は、この湖の水を吸って成長しているはず。

 だったら神力を注ぎまくれば、なんかこう、いい感じに――。

 美しい木々や水には力が集まりやすいって精霊たちが言ってたし!


 オレは10分ほど注ぎ続けたところで作業を中断し、しばらく様子を見る。

 が、特に変わった様子はなさそうだった。


 ――だめ、か?

 まあまだ初日だしな……。


 オレは体力を消耗しすぎないよう、この日は早めに休むことにした。

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