第207話 ひっさびさの家づくり!

 オレは、その美しい湖周辺を神鉱石の育成場所とすることにした。


「――できれば、いっそこの近くに住みたいな」


 先ほどの小屋からは普通に歩いても20分程度、飛べば1分かからない距離だが。

 しかし神族が住むと、その一帯が「神域」となり活性化するというメリットがある。

 だったら近場に住むに越したことはない。


 だが問題は、家をどうやって建てるか、ということだ。

 スキルを駆使してどうにか木を集められたとしても。

 スキル【神様】が使えない状況では物質を自在に変化させるのも難しく、あまりに体力を消耗しすぎる。


 実技試験の期間は7日間しかない。

 そんなことに時間を割くのは避けたい気がする。


「いやでも、そもそも神鉱石の育成のためにできることって何だ? フォルテさんに、リエンカ家が管理してる神鉱石用の星、見せてもらえばよかったな」


 しかし今となってはもう遅い。

 試験はすでに始まっている。

 だったらいっそ――


「家、作るか。スキル【建築】は使えるはずだし、簡易的なログハウスなら……!」


 オレは森の木を【水】で伐採し、【身体強化】を使って倒れた木をどうにか一か所に集めていく。

 以前、水精霊たちが水圧で木を切っているところを目撃していたのだ。

 そして【建築】を使って、どうにか雨風を凌げるログハウスを完成させた。


「――ふう。こんなもんか」


 ログハウスが完成する頃には、夕方へと差し掛かり始めていた。

 でも、以前ログハウスを作った際は、ハクがいなければ完成させることすらできなかったが。

 今はこうして、自分の力だけで切り開くことができている。


 成長したな、オレ。

 やればできる子! 中身おっさんだけど!!!


 家具類は一通り小屋の中に揃ってるし、それをここに移動させれば問題ない。

 トイレは――今でも慣れなくてモヤモヤするけど、一応不要となったし。

 あとは風呂があれば完璧だ。


「……この湖を使わせてもらうのはまずいかな? オレが入ることで汚染されて神鉱石の育成に影響出たりしない、よな?」


 でも以前、フィーネが「神族は存在が浄化装置みたいなもの」とかなんとか言ってた気がするし。

 だったらべつに、オレが入っても悪いことにはならない――はず。たぶん。


 浄化機能がついてるってことは、まあ風呂もなくても大丈夫なんだろうけど。

 でも何となく、そんな機能で浄化されてもスッキリしない。

 本当はお湯だと嬉しいが、さすがにお湯にしてしまうと周囲の植物に悪影響が出そうだし。

 たった7日間だし、ここは水で我慢しておこう……。

 極寒の地とかじゃなくてよかった。


 オレは小屋から家具やら何やらを移動させ、採った食材をログハウスの一角に籠ごと置いた。

 これでとりあえず生活する分には問題ないだろう。


「さて。いよいよここからだな。どうにか神鉱石を生み出す方法を考えないといけないわけだけど……」

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