第204話 地位や権力には興味ないけど。
筆記試験1日目は、どうにか満足いく結果を残せた。
と、思う。たぶん。
筆記試験は1日につき90分×3回行われる。
こんな試験らしい試験を受けたのは、大学受験以来じゃなかろうか。
3つめの試験を終えると、部屋にクリエが入ってきた。
「お疲れ様~。試験、どうだった?」
「まあまあ、ですかね。ちゃんと合格できるといいんですが」
「神乃悠斗くんならきっと大丈夫よ~。筆記試験とはいっても、なんかこう、雰囲気で解けちゃうようなのばかりだし」
それはあなただけですクリエさん!!!
この天然さんめ!!!
実際、ルアン先生についてもらって勉強してたからこそどうにか乗り切れたが。
それがなければほとんど分からなかった自信がある。
試験対策もばっちりなんて、さすがリエンカ家の家庭教師だ。
「試験中は大神殿に泊まってもらうことになるわ~。それから、外出は原則禁止です。もし万が一のことがあったら、許可をとってちょうだいね。それじゃあ、部屋まで案内するわ~。ついてきて」
「ありがとうございます」
大神殿があるエリアの敷地内には、試験や研修で使う宿泊棟が建っている。
オレは、そこの201号室を割り当てられた。
「そういえば、天使はどうしたの~?」
「え?」
「ほら、身の回りのこととか」
「ああ、そういうのは自分でやるので大丈夫ですよ」
「じ、自分で!?」
クリエは当然生まれながらの名門神族で。
それゆえに、自分のことを自分でするという発想がなかったようだ。
だいぶ衝撃を受けていた。
「あなた本当に何でもできるのね~」
「いや、オレは元々転生者ですし、転生前はいたって普通の一般庶民だったので。むしろ世話してもらう方が慣れないっていうか……」
「そういうものなのね。えらいわ~。一応、何かあったらそこのベルをならせば、大神殿に仕える天使の誰かがきてくれるはずよ」
そう言ってクリエが示した先には、ハンドベルのようなものが置かれていた。
ベルって本当にまんまベルだな!?
本当にこんなんで呼べるのか?
「あ、ありがとうございます……」
「明日も試験頑張ってね。明日の筆記試験が終わったら、1日休みが挟まれるの。大神殿から出ることはできないけど、敷地内でなら自由に過ごせるわ~」
「おおお! 頑張ります!!!」
――そういえば、ラテスを10日間も留守にするなんて初めてだな。
ハクとフィーネは仲良くやってるかな……。
でもまあ、最近はフィーネもハクを家族として扱うようになってきたし、たまには2人にしてみるのもいいか。
明日の筆記試験が終われば、あとは実技試験のみ。
いまだ知らされない実技試験の内容が気にはなるが。
今はとりあえず目の前のことに集中するしかない。
べつに地位や権力には興味ないけど。
でも、ランクAにならなければフィーネと並べない。
よし、絶対合格してやるぞおおおぉぉおおおぉおおおお!!!!!
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