第197話 試験内容が謎って何なんだ!

 リエンカ家での仕事が休みの日。

 オレはランクA昇格試験に向けて、家で自主的に勉強していた。

 今日はハクはグノー村へ行き、フィーネは仕事でリエンカ家へ戻っている。


 ――昇格試験まであと1ヶ月もないのか。

 ルアン先生いわく、このままいけば問題ないらしいけど。

 でもやっぱり、試験日が迫ってくると不安になる。


 ランクAの試験は、ランクSの神族が取り仕切る決まりになっている。

 が、リエンカ家の不正を防ぐため、クリエさんは立ち会うことができないらしい。


 試験内容は、

 ・レベル、神力、神様能力、信仰の数値測定

 ・筆記試験

 ・実技試験

 の3つで構成されている。


 ――実技試験、詳細まったく知らされてないんだよな。

 何するんだろう?


 前回は、たまたま自発的にやった行動が試験内容と被っていて合格できた。

 が、さすがに二度もそんな偶然が起こるとは思えない。

 そもそも、今回は昇格試験の審査期間自体が存在しない。


 フォルテさんいわく、試験期間である10日間は大神殿に泊まることになるという。

 数値の測定は数分で結果の出るものだったし、筆記試験は基礎知識を問うものがほとんどらしいから、いくら長くても2~3日もあれば終わるだろう。

 ということは、この残りの時間で実技試験が行われる。はず。


 約一週間。

 この期間で、いったいどんな成果を出せばいいのか。


 って分かるわけねえええええええ!

 試験内容一切明かされないとか、そんなんアリなのか!?

 一週間って結構なボリュームだぞ!?

 オレみたいな成り上がり神族にこんな手法、明らかに不利だろおおおおおお!!!

 く、くそう……。


 でもまあ、試験内容についてとやかく言っても仕方がない。

 ここまできたら、あとはやれることをやるだけだ。はあ。


 そんなことを考えていたとき。


「ハルト様」

「ん? ああ、ユイナか。どうした?」

「お客様がお見えです。ラテス村の村長様です」

「ガーネットさんか。ありがとう。すぐ行くから客室に通しておいてくれるか?」

「はいっ」


 ガーネットはオレをとても信頼してくれているようで、村の運営に関することや住民のこと、例の力のことなどを度々相談しにきてくれる。

 しっかりとしていながら物腰柔らかなガーネットには、ハクやフィーネとは違う大人の魅力があり、たまにうっかり見とれてしまいそうになる。


「お待たせしました」

「領主様! お忙しい中、いつもお時間いただき申し訳ありません」

「いえそんな。こうして訪ねてきていただけるのは嬉しいですよ。今日はどういった案件ですか?」

「……今日はハク様やフィーネ様はいらっしゃらないのですね?」


 あれ。

 フィーネに用事――ってことはないだろうから、ハクに用事だったか?


「今日はどちらも留守にしていまして」

「そ、そうなのですね! ええと、要件、というほどのことではないのですが、例の力が安定して使えるようになったことで、ラテス村にもいろいろと変化がありまして。そのご報告にと」

「ありがとうございます。いつも分かりやすくまとめてくださり助かります」


 ガーネットの仕事はとても丁寧で、書類も毎度とても分かりやすく綺麗にまとめてある。

 オレは書類を受け取り、1ページ1ページ確認していった。

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