第196話 残すところあと1ヶ月!
半年後にランクA昇格試験を受けることが決まったあの日から5ヶ月が経ち。
昇格試験まで残すところあと1ヶ月となった。
「神力を出力する際の感覚把握や調整も、だいぶ安定してきましたね」
「ありがとうございます。ルアン先生のおかげです」
「悠斗様が真面目に取り組んでいるからですよ。神力の密度も高くなってきましたし、ここまで来れば今後倒れることもないでしょう」
こうして訓練を重ねて感覚を掴むと。
以前の自分がどれだけ滅茶苦茶な出力をしていたのかが分かる。
オレの神力の使い方は、持久走なのに序盤から全力疾走してしまう小学生のような使い方だったのだ。
そりゃあ倒れるのも無理はない。
ルアン先生は厳しい面もあったが、名門神族リエンカ家に長年仕えている家庭教師なだけあって優秀で、教え方もとてもうまい。
こうした先生をあてがってもらえたのは、本当に幸運なことだ。
「名門神族として知っておくべき教養やマナー、ルールも、だいぶ身についてきたように思います。これなら、近々実践を交えてもいいかもしれませんね。もちろん、無事ランクAになれれば、ですけど」
「あはは……頑張ります」
名門神族の間では、お茶会やパーティーなど社交の場が数多く設けられる。
これらに出席して顔を繋いでおくのも、名門神族として重要なことらしい。
――正直、そういう交流会みたいなの得意じゃないんだけどな。
まあでも、そんなことも言ってられない、か。
何かのときに人脈が物を言うのは、人間の世界でも神界でも同じらしい。
「悠斗様の欠点は、少々ご自身を卑下しすぎるところです。ふてぶてしい態度を取る必要はありませんが、もっと堂々としていいんですよ。あなたは今や、リエンカ家に選ばれた特別な神族なのですから」
「すみません……」
「ほら、そうやってすぐに謝る。ここは返事をすればよいところで、謝るところではありませんよ」
「はい。すみ――あ、いや、気をつけます……」
くそ……謝るクセが抜けねえ!!!
謝ってやり過ごそうとするのがよくないのは分かってる。
分かってるけど、ついとっさに謝ってしまう。
「まあ、言い訳ばかりして謝らないよりはマシですが。でも謝ってばかりいると、よその方々にいいように使われてしまいますよ。名門神族の方々は、それぞれ自分の家を守るという責務を抱えています。もう少し毅然とした態度を取れるように頑張ってください。リエンカ家は、名門神族の中でも上位に位置していますから」
「……はい。善処します」
名門神族も大変なんだな……。
ラテスではコミュ障なフィーネも、名門神族の集まりには定期的に参加している。
あのコミュニケーション能力でいったいどんな会話をしているのか、気になるところではあるが。
しかしそれでも行くということは、ちゃんと役割は果たしているのだろう。
偉いな、フィーネ。
オレも頑張らないとな。
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