第198話 力がもたらした変化、そして
「――なるほど。素晴らしいですね」
人族が水、炎、氷の力を使えるようになったことで、今までは鉱石力を利用した「ライフライン」でしかなかったものを自らの力で自在に利用できるようになった。
今まで井戸を活用するしかなかった住民の水道事情も大きく変わり、衛生レベルも格段に向上。活動範囲も一気に広がったという。
「そこで、領主様にご相談があるのです」
「はい、何でしょう?」
「私たちラテス村の住民にも、トリルの方々同様、開拓の許可をいただけないでしょうか? 助けていただいた身で厚かましいことは重々」
「もちろんいいですよ」
「――へ?」
ガーネットは鞄から書類を取り出しかけ、そのまま固まってしまった。
交渉のための資料を用意していたのかもしれない。
が、しかし。
オレにとっては、積極的に開拓に励んでくれるなんて願ってもないことだ。
「へ? あの、でも条件もまだ――」
「条件ですか。そうですね……」
こっちとしてはむしろ自由に開拓してほしいくらいだけど。
でもまあ、一応トリル人たちにも開拓したい区画の申請はしてもらってるし、それはやってもらうかな。
奪い合いになっても困るし。
「調査や開拓をしたい区画を、事前に申請しておいていただきたいです」
「そ、それはもちろんです。そういうことではなくて……」
「あとは、無理のない範囲でたまに特産品をいただけると嬉しいですね」
「そんなことでいいんですか……」
「オレも土地を持て余していて、人手がほしかったところなんですよ。1人でこんな広大な土地を管理するのは大変ですしね」
そもそも、オレが管理すべき部分はそこじゃないし。
オレはこの神殿と果実を栽培する土地があれば十分だ。
「ただし、争い事は避けてください。万が一戦争のようなことになれば、その力は今後一切使えなくなります。それからご存じのとおり、この地には人間以外の生き物も数多くいます。そうした土地を侵害する行為は絶対にしないようお願いします」
「それはもちろん! 精霊様には感謝してもしきれない恩がありますから。絶対にそのようなマネはいたしません」
「信じてます」
こうやって精霊や人族がラテスを開拓してくれれば、ハクと世界一周する際、オレの知らないラテスを見ることができる。
――最初は2人でまわる予定だったけど。
そのときはフィーネも連れていってやるかな。
1人置いていくと拗ねそうだし。
そのときに、ハクとフィーネが楽しめる星になったらいいな。
「……そ、そういえば領主様」
「はい」
「その、フィーネ様とはどういうご関係なのですか?」
「――え」
「す、すみません! た、ただその、とても仲が良さそうだなと」
ガーネットは、なぜかもじもじしながら頬をほのかに紅潮させている。
何かいかがわしい関係だと思われてるんだろうか……。
――フィーネとの関係、か。
なんだろうな。
救済召喚者と、被救済召喚者。
先輩名門神族と、後輩成り上がり神族。
いずれ家族になる予定の、家族になりたいと思っている、そんな――
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