第194話 調査結果と気になる点

「ひとまずではあるけれど、調査が完了したわ」

「その……どんな感じでしょうか?」

「現状、欠陥や病み域の発生はなかったわ。病み域というのは、淀みがたまってしまっている場所のことね」


 つまり問題はなかったってこと、なのか?


「ただ、鉱石層の流動がとても活発で、それゆえに不安定ではあるわね。これだけ急激に増えていれば当然のことだとは思うけれど」

「……なんかまずそうですけど大丈夫なんですか?」

「これに関しては、一概にどうとは言えないわね。あなたの神族としての力が問われている、というところかしら」


 オレに制御できるならプラス、できないならマイナス、ということか。


 正直あまり自信はない。

 でも計測器で測定できないレベルの力があるのだから、努力次第では――。


「鉱石力を安定させる主な方法は、管理者が自身の神力を安定させること、星の住民の幸福度と信仰心を高めること、それから精霊を増やすこと。この3つよ。悠斗くんの場合は、1つめのレベルをもう少し上げる必要がありそうね」

「な、なるほど……」


 分かりやすくて助かる!!!

 さすが、どこぞのぽんこつとは大違いだ。


「それからドラゴンの件だけれど。北上した先の山の奥から大きな力を感じるわ。恐らく、あの神鉱石のある位置はそこね」

「よ、よくお分かりで……」

「ドラゴンは安定にも厄災にも繋がる扱いの難しい神獣だから、あまり初心者におすすめはしないのだけど。でも今のところ良好な関係を保っているようだし、ひとまずは様子を見ることにしましょう」


 フォルテはその後もテキパキと問題点を洗い出し、次々と方向性を決定していく。

 オレとハク、フィーネは、ただただフォルテの指示を聞くことしかできなかった。

 星の管理にもだいぶ慣れてきたと思っていたが、フォルテの訪問は、そんなふうに思っていた自分の甘さを思い知る結果となった。


「あとは人族に芽生えた力の件ね。この件に関しては報告書に書かれていた内容で問題ないと思うわ。被救済召喚者というのは、元の世界から切り離されて存在が不安定になりがちなの。そうした中で鉱石力が急増して、しかもその力も不安定だから引火したのね」


 い、引火……。

 なるほど言い得て妙だな。


「でもこれは悪いことではないし、自然現象の1つとして捉えて問題ないわ。ちょっと精霊に寄っただけよ」


 だけで済ませられるのすごいな!!!

 というか、自然現象で精霊の力(?)が使えるようになるとか。

 オレも人間としてラテスに生まれたかった……。


「ほかに何か聞きたいことはあるかしら」

「え、ええと。じゃあオレは、とりあえず自身の神力を強化して安定させればいいんですね?」

「そういうことになるわね。授業でやっている内容にそうした訓練も含まれるから、このまま頑張っていれば大丈夫だと思うわ」

「ありがとうございます」


「ほかにも、あなたとこの星がほとんど一体化しているところとか興味深い点はいくつかあるのだけど。でも今明確に言えるのはこのくらいかしらね」


 ――え。

 今なんかさり気なくめちゃくちゃ気になる発言しなかったか?


「私の方でも、今日の調査結果をもとにもう少し深掘りしてみるわ」

「よ、よろしくお願いします……」

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