第192話 フォルテさんが調査に来る、だと

「――というわけで、ラテスにある山脈の一角に、神鉱石が採れるエリアができてたんですが」

「…………」


 リエンカ家での仕事の日。

 オレは採取した神鉱石のサンプル、そして【記憶ショット】で撮影した現地の写真をフォルテに提出した。


「この神鉱石、本当に何も手を加えていないのかしら」

「ええ。この写真の位置に自生してたのを採取しただけです」

「……そう。それにしても素晴らしい純度ね。あの星は元々、鉱石力だけは中の上くらいにあったのだけれど。でも本当にそれだけの星だったのよ? ここまでくると、一度本格調査が必要かもしれないわね」


 ほ、本格調査……


「――というと?」

「私が出向いていって、リエンカ家責任のもと調査をする感じかしら」

「それって、場合によってはラテスを没収される可能性もあったり……?」

「まさか! そんなことはしないわ。悪い方面での調査であれば可能性もあるけれど、今回はそうじゃないもの」

「そ、そうですか。よかった……」


 あの何もなかった星が、ようやく回り出したところなのだ。

 ここで振り出しに戻るなんて悲しすぎる。

 それに、オレを信じてくれている住民たちを見捨てるなんてできない。


「悠斗くんは本当にラテスが好きなのね」

「オレの生まれ故郷みたいなものですからね。それに、ラテスが無人だった頃からのすべてを見てきてますから。愛着も湧きますよ」

「悠斗くんが神族になってくれて、本当によかったわ。安心して活動できるよう、私も引き続きサポートするわね。明日一度、ラテスにお邪魔してもいいかしら」

「はい! 助かります!」


 フォルテさんがラテスに来るのは初めてだな……。

 管理方法がなってないって怒られたらどうしよう。


 まあでも、フォルテさんに見てもらえれば、安心材料としてはかなり大きい。

 正直、このまま鉱石力が増え続けて爆発でもしたらって不安もあったし。

 悪い影響がないかも聞いてみよう。


 ◇ ◇ ◇


「――というわけで、明日ここにフォルテさんが来る」

「!?」

「!? か、母様がここに? 君いったい何したのよ……」

「べつに何もしてねえよ。神鉱石の件を話したら、一度調査したいってさ」


 ああ、そうだ。


「せっかくだし、ラテスの特産品でもてなそう」

「……君、案外そういうとこ抜かりないわよね」

「チャンスは掴みにいくものだぞ」

「ブラック企業で延々社畜してたのは誰かしら」


 ――ぐ。

 そんなジト目で見るなああああああ!


「うるせえ。過去は振り返らないことにしたんだよ! ハク、何かいいアイデアないかな。いろいろレシピ研究してただろ」

「ちょっと! 私にも聞きなさいよっ」

「シュワシュワジャム入りアイスハーブティー、それからモモリンタルトはいかがですか? タルトに乗せるモモリンはシュワシュワジャムでコーティングします」

「おー、いいな! さすがハクだ!」

「むーっ!! 何よハクばっかりっ!! ふんっ」


 フィーネは不満そうに口をとがらせ、リビングのソファーにドサッと座るとそのまま倒れてふて寝してしまった。


「あわ、あわわ……」

「大丈夫だ気にするな。あとでタルトの試食でもさせてやろう」


 というかほんとに寝てるし!

 寝つきいいな!!!

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