第9章 神様ランクB 目指せランクA

第190話 残念なのも魅力のうち

「――という内容で実施しようと思います。何か質問はありますか?」


 人族の力の安定化を図るため、当分の間、定期的に力の使い方講座を実施することになった。

 講師を務めるのは水精霊と炎精霊、それから氷精霊。

 今のところ、この3種類以外の力が芽生えたという報告はない。


「私たちに講師なんて務まるかしら。心配だわ……」

「大丈夫ですよ。オレとハク、それから一応フィーネもいますから。少なくとも、誰かは必ず立ち会うようにします」

「ちょっと一応って何よ! そのあたりに関しては私が一番精通してるんですけど!?」

「会議中に大声出すな。恥ずかしいぞ」

「なっ――」


 会議には、打ち合わせのため集まった水精霊と炎精霊と氷精霊の長、それからオレ、ハク、フィーネが出席している。

 最近、フィーネがやたらとラテスの神様活動に積極的だ。

 フォルテに何か言われているのか、それとも別の理由かは分からないが。

 それでもまあ、心強いことは確かなのでよしとしている。


 最初のうちは人見知りを発揮してろくに話せなかったフィーネも、今では顔なじみが増えてきた。

 そして少しずつ会話が成立するようになり――それと同時に、本性も露呈するようになった。


 が、フィーネのそうした親しみやすさは好評で、今では密かな人気者になっている。

 最近は、たまに偉そうに家事を手伝うフィーネに出くわした際なんかは、「フィーネ様だ」「フィーネ様が家事してる可愛い」「頑張れ!」とまるで子どもを見守るような様子だ。


 もちろん、まさか自分がそんなポジションにいるとは、本人はまったく気づいていないが。


「3人も一緒なら心強いですね。神族様と神獣様になら、むしろ私たちが習いたいくらいです」

「……ま、まあ、暇があったら考えないでもないわよ」


 照れながらも嬉しそうにドヤ顔でふんぞり返るフィーネに、精霊たちの表情が和む。


 ――本当、こっちが恥ずかしくなるレベルに乗せられやすいな!!!

 名門神族のくせに社交辞令という言葉を知らんのかまったく。


「人族の力はまだ未開発ですし、前例も少なくあまり参考になりそうな例がありません。少しずつ、様子を見ながら開発を進めていきましょう」


 ◇ ◇ ◇


 力の使い方講座の件を報告書にまとめてフォルテに提出し、ランクAになるための授業を受けて帰宅すると、あっという間に夜になった。


「君、最近本当に忙しそうだけど大丈夫? 母様とルアンに無理させられてない?」

「なんだ心配してくれるのか?」

「そ、そりゃあだって、うちの事情に付き合わせてるわけだし。これでまた君が体調崩したら、なんか虐げてるみたいじゃない」


 そんなふうに思ってたのか……。


「心配しなくてもオレの意思でやってることだよ」

「君は社畜体質なんだから、無理しないように積極的に息抜きもするのよっ」

「社畜体質って……。でもまあ分かったよ。ありがとな」


 フィーネにはまだ内緒だが、実は今日、半年後にランクA昇格試験を受けることが決まった。

 あと半年。あと半年頑張って無事昇格できたら。

 そしたらようやくフィーネと肩を並べることができるのだ。


 オレがランクAになったら、フィーネはどんな顔をするだろう?

 悔しがるかな。喜ぶかな。

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