第189話 「精霊と人族の共存」への第一歩
「――精霊から聞いた話は以上です」
精霊やフォルテと話をした結果。
・人族と精霊の共存できる世界を目指したい。
・人族に芽生えた力は、精霊からの「お近づきの印」。
・ただし、人族が精霊に害をなすような行為をした場合は力を剥奪する。
・力を争いごとや悪事に利用した場合も、同様に力を剥奪する。
という方向性に決まった。
今日は人族にそれを伝えるため、ラテスの神殿に各人族の代表を呼んで集まってもらっている。
「精霊様からお近づきの印をいただけるとは――!」
「いただいた力は、生活の役に立つものばかりです。今後、一層豊かになりそうですね。私たちエクレアの民も、精霊に手出しはしないと約束しよう」
「俺も賛成だ。俺らトリルの民は、まだまだ開拓を進めている途中だ。こんな力がもらえるなんてそんな有難い話はない」
人族たちはみな、こちらの意見、条件に賛同してくれた。
人族の力は、水が出せたり火が出せたり、風が起こせたりするものの、今のところ災害を巻き起こすほどの威力はない。
せいぜい「生活に便利」程度の力である。
今後、規格外の力を持つ者が現れないよう精霊主導で管理も行ない、力の調整もすることにした。
フォルテいわく、人族と精霊の境目がなくなるような事態はあまり好ましくない、というか避けた方がいいとのことだった。
「今後、あちこちに精霊の村や町が現れ始めると思います。立ち入り禁止ではありませんが、居住区はしっかり分けること、精霊の管理する領域内では精霊の言葉に従うことを約束してください」
「精霊の領域か否かはどうやって判断したらいいんだ?」
――あ。たしかに。
そうだな――地図アプリに領域が確認できる機能を追加するか。
「お渡ししている強化ガラス端末に地図アプリが入ってますよね。その地図を見て、そこが人間の領域なのか精霊の領域なのか、もしくはどちらでもないのかを確認できるようにしておきます。ですのでアプリを確認するようにしてください」
「本当に、精霊といいこの強化ガラス端末といい、この世界は不思議だらけですね。ハルト殿がいったい何者なのか、いつか話を聞かせていただきたい」
「ははは……オレはいたって普通の領主ですよ」
実は神様です、なんてさすがに言えない。
「もし力に関して何かイレギュラーなこと、疑問などが出てきたら、そのときは遠慮なく聞いてください」
「ありがとうございます。私たちが混乱せずに暮らせるのは、ハルト様がいらっしゃるおかげです」
「本当に。見たところまだ若いのにすげえよ」
「オレもあなた方がこの地を気に入ってくれて嬉しいと思ってますから。今後もより暮らしやすい場所になるよう、ご協力お願いします」
こうして人族に力のこと、今後のことを説明し、ラテスは「精霊と人族の共存」への第一歩を踏み出したのだった。
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