第186話 やっぱり私の案は正しかったわね☆

「――という状態になってまして。こういった、人族が精霊のような力を持った事例は過去にもあるんでしょうか?」

「とても稀有なことではあるけれど、なくはないわ。ただ、普通は何万年と運用している星に稀に起こることで、こんな数年単位で起こった話は聞いたことがないわね」


 フォルテは頭を抱え、ため息をつく。

 今や常識が通用しない星となってしまったラテスには、フォルテもクリエも注目してくれているが。

 しかし前例がないため正確な答えは返せない、と言われることが増えていた。


 今回の現象も、全体で見ればゼロではない。

 しかし期間があまりにも短いため、前例が参考になるか分からないらしい。


 すべての人族を「救済召喚」という形で連れてきているため、人族の進化にかかる時間がショートカットされた、というのもあるが。

 しかしたった数年で、しかも全員に力が宿るというのは、それだけで説明できるレベルを超えている。


「今、ラテスに上位精霊は何名いるのかしら」

「ええと――」


 森精霊が32名、水精霊が8名、風精霊が20名、炎精霊が123名、山精霊が30名、氷精霊が53名だから――


「全部で266名ですね」

「――なるほどね。上位精霊というのは、普通は星に10名もいれば多い方なのよ。どうしてそんなにたくさんの上位精霊を?」

「ええと……人族と精霊の共存を目指したくて、虐げられないように、と思いまして。それで全員上位精霊にしてしまえばって」

「あなた、思考回路がだんだんフィーネに似てきたわね……」


 いやまあ、フィーネに言われたことを実行したんですけどね!!!


「狭いうえ力に満ちたあの星の中に、星の管理者の眷属である上位精霊が266名もいれば、それは異常事態も起こるわよ」


 ええ……

 フィーネえええええええええええええ!!!


「上位精霊というのはね、精霊界で何らかの役割を担っている精霊、もしくは神族の眷属として何らかの役割を課された精霊がなるものなのよ。あなた、体は大丈夫?」

「――え?」

「眷属は、あなたの力とリンクさせることで成り立つ上位精霊よ。そんなにたくさんの精霊とリンクして平気なの?」

「と、特には何も感じませんが……」


 今のところこれといった疲労感もないし、たぶん大丈夫だとは思うけど。

 また倒れたりしない――よな?


 そんなことを考えていたその時。


 ガチャ――


「母様、この間言ってた資料――神乃悠斗? 何してるのこんなところで」


 突然入ってきたフィーネは、オレを見てぽかんとした顔をしている。


「フィーネ! ノックくらいしなさい!」

「だって資料で両手が塞がってるのよ。それより何か深刻そうだけど、何の話?」

「おまえの全精霊を上位精霊化するって案を実現した結果、人族に精霊の力が宿る異常事態が発生したから! 相談してたんだよ!!」

「何それすごいじゃない! それってすごくレアなことなのよっ? やっぱり私の案は正しかったわね☆」


 フィーネが資料を両手で抱きかかえたまま、私を称えろと言わんばかりのドヤ顔をこちらに向ける中。

 オレとフォルテは、目の前の考えなしに頭を悩ませるのだった。

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