第185話 人族と精霊が共存する道
「精霊たちに聞いてみないと確かなことは分かりません。一度話をしてみます。……ちなみに、この力が芽生えたのはラテス村の住民だけですか?」
「すみません、そこまでは……。幻覚である可能性も消えていませんし、一応、万が一のことを考えて、この力のことは村の外の方々には伏せています」
そうか、まあそうだよな。
オレだって前世でそんな力が芽生えてたら、真っ先に疑うのは自分の頭だっただろう。
しかしこうなってくると、早急に幻覚説を消さなければ危険だ。
恐らくガーネットは、エクレアの民の仕業である可能性も考えているのだろう。
「――オレの直感ですが、その力は悪いものではないように思います。とにかく一度、エクレアのヴァリエ王とも話をしてみます」
「ありがとうございます。助かります」
◇ ◇ ◇
ガーネットとの話を終えたあと、オレはエクレアへと向かい、ヴァリエ王と話をした。
どうやらエクレアでも同じ現象が起こっているらしく、ガーネットと同じように考えて情報統制を敷いていたらしい。
――関係が良好とはいえ、元々はまったく違う世界の住民だしな。
どちらの民も、元の世界で虐げられてきたというトラウマを抱えている。
何かが起こった際、周囲を疑ってしまうのは仕方がないことなのかもしれない。
オレはいったん自宅へ戻り、森、水、風、炎、山、氷の精霊長を招集した。
「――という事態が起こってまして。そこで精霊さんたちにご相談があります」
「私らに力になれることがあれば何なりと」
森精霊の長老フォーレの言葉を皮切りに、それぞれうんうんと頷き協力の姿勢を示してくれた。
「実は、人族と精霊を分断しているレイヤーを撤廃しようかと思っています。今のあなた方の力があれば、人族に捕えられることもまずないでしょう。もちろん、今までどおり居住区域は分けます」
「人族と……」
難色を見せたのはフォーレだった。
森精霊は人族に迫害され、捕縛されて数を減らし、絶滅の危機に陥ったという過去を抱えている。
当然の反応だろう。
「人族は、我々の村を荒したり、差別して攻撃したりはしないでしょうか? 私としてはハルト様の意向には従いたいと思っていますが、しかし――」
まあ、一つ返事でOKとはいかないよな。
「――そこで提案があります。精霊に危害を加えようとしたものから、ラテスの力を奪う仕組みを構築しようと思います。芽生えた力がもっと人族に浸透すれば、それを基本とした文化に変わっていくはずです。その力が精霊の恩恵だと伝えておけば、良からぬ行動も抑制できるでしょう」
「な、なるほど。そういうことであれば、私は賛成です」
ラテスに最初にやってきた森精霊は、精霊たちのまとめ役となっているようで。
フォーレが賛同すると、ほかの精霊たちもそれぞれ頷いてくれた。
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