第182話 スキル【昇格】の力すげえええええ
「ここにいる精霊を全員上位精霊に昇格させてしまえば、まあ不可能ではないかもしれないわね」
フィーネのこの言葉が忘れられず、オレは精霊を上位精霊にする方法やそれに必要なコスト、注意点、実践例などを片っ端から調べていった。
一般的な精霊を上位精霊に昇格させることができるのは、ランクB以上の神族。
これはクリアしている。
一点気になるのは、神族の力で昇格した精霊は、基本的にその神族の眷属扱いになるということ。
「眷属かあ……なんか支配するみたいで気が進まないな」
「そういうものですか? 僕が精霊ならたぶん嬉しいですけど」
「ええ……まじか」
まあ、以前ファニルさんとの契約内容をハクに任せたら絶対服従契約だったしな。
元が神様アイテムであるハクにとっては、誰かに仕えるというのはいたって普通のことなのかもしれない。
今は――14時か。
2人でこうして考えてても答えは出ないし。
「ハク、グノー村に行こう」
「はいっ!」
◇ ◇ ◇
「――というご提案なのですが。率直なご意見お聞きしたいなと」
「……我々を上位精霊にしていただけるということですか?」
「ええ、差支えなければ、ですが」
「差支えなんてそんな! 精霊にとって、神族様の眷属になれるというのはとても名誉なことじゃ。そのうえハルト様の、なんて!」
長老フォーレは、感動した様子で目を輝かせる。
その目には、うっすら涙も滲んでいて――
「そ、そんなに喜んでいただけるとは」
「一時はもうダメかと思ったが、こうして救っていただいて、上位精霊になれる日が来るとは――本当、生きててよかった」
フォーレのその言葉に、こちらまでもらい泣きしそうになる。
――いろいろあったけど、オレはたしかにここにいる森精霊たちを救ったんだな。
最近は神様活動コンサルをすることも多いけど。
やっぱりオレは、神様活動そのものに取り組む方が好きだ。
オレの活動で救われる命があるなんて、なんて光栄なことなんだろう。
「――ふふっ」
「うん? ハク?」
「すみません。でも僕は、悠斗様の神様活動が本当に大好きなんです。だからなんか嬉しくなっちゃいました」
「おお、嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。ここまでやってこれたのはおまえのおかげでもあるんだぞ、ハク」
「えへへ」
ハクは耳をピコピコさせながらすり寄ってくる。
こうして甘えてくるハクにもだいぶ慣れた。
オレが頭を撫でると、気持ちよさそうにもっともっとと要求してくる。
可愛いヤツだ。
「それじゃあ、上位精霊への昇格を行ないたいと思います」
「お願いします」
森精霊32名が集まったところで、事前に覚えておいたスキル【昇格】を展開。
グノー村全体が淡い緑色の光に包まれ、キラキラと輝く光の粒子が宙を舞い、精霊たち霊力が上がっていくのを感じる。
そしてなんと!
ただでさえ美しかった森精霊たちは、一層美男美女になった!!!
はあああああああああああああ!?
一番の変化を見せたのは、長老フォーレ。
しわの刻まれていた肌はつやつやになり、年老いた風貌から一気に若者へと――
――っていやいやいや。もはや別人だろなんだこれ!?
ほかの森精霊たちも、それぞれまるで花のような美しさになっていた。
「こ、これが神族様の力――。なんて凄まじい力じゃ」
長老は自身の姿を確認し、思わずそう口にする。
以前の姿では違和感なかったけど、こうして若返ると口調への違和感がすごい。
ほかの森精霊たちも、自身の変化やみなぎる力に歓喜の声を上げている。
喜んでもらえてよかった。
よかったけど。
なんだこの敗北感はああああああああああ!!!
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