第181話 みんなを見守り守る立場でありたい

 人族と精霊の生活環境を安定させるため、以前スキル【神様】の能力で世界のレイヤー分けを行なった。

 それは互いの身の安全を考えてのことだったのだが――


「やっぱり、どうにか人族と精霊を共存させられないかな」

「はあ? やめておきなさい。人族と精霊は、住む世界が違う生き物なの。争いが起こったり、種族滅亡の危機に陥っても知らないわよ。君だって、人間だったころ精霊なんて見なかったでしょ?」

「いやまあそうなんだけどさ……」


 でも、オレを介してしか繋がれないってもったいないと思うんだよな。

 せっかく同じ世界にいるのに。


「何かいい方法はないか? 神界では、神族と精霊と天使が共存してるだろ」

「神族はほかの種族を虐げたりしないもの。それに共存っていっても、神界に住めるのはごく一部の選ばれた上位精霊と大天使だけよ」


 神族にとっては生活圏だが、神界は本来、全世界の中枢でもある。

 それゆえにセキュリティも万全で、紹介がなければ入ることすらできない。

 ――だったか。


「ああでも、ここにいる精霊を全員上位精霊に昇格させてしまえば、まあ不可能ではないかもしれないわね」

「――というと?」

「上位精霊になれば、人族に捕まるなんてことはまずないわ。だから、少なくとも精霊の生活の安全は保証できる」


 な、なるほど。


「でも逆はどうすんだ?」

「精霊たちには、君が神族だって明かしてるんでしょ? 神族に逆らえる精霊なんていないから、君が毅然とした態度を取っていればそこは大丈夫よ」

「ええ……。本当に大丈夫なのか?」


 正直、不安しかない。

 いくら表面上は従順であっても、裏で何かされたら――


「君は元が人間だから神族の立場を舐めてるようだけど、本能的に神族の存在を認知できる精霊や天使にとって、神族っていうのは本当に特別な存在なのよ。だって創造主だもの。そして自分たちのことを一瞬で無に還せる存在でもある」

「一瞬で無に」


 こ、こええ……。


「それに救済召喚ってシステムからも分かるように、精霊に星そのものを管理・維持する力はないわ。神族以外の種族は、結局どうあがいたって神族に生かされるしか生きる道はないのよ。精霊や天使は、神族を認知できない人族とは違ってそれを理解してるわ」


 ――なんかあまりそういうふうに考えたことはなかったけど。

 そう考えると神族ってすげえな。

 いやまあ、分かってたけどさ。分かってたけど――


 はあ。オレは本当、なんてものに転生してしまったんだ……。

 もっと自分が神族である自覚を持っておかないと、知らないところで住民たちに窮屈な思いをさせてしまいかねない。


 立場が上だからこそ。

 オレは支配するのではなく、みんなを見守り守る立場でありたい。

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