第180話 素直になれないバカ2人
氷精霊と第3の人族(トリル人)を救済召喚してから、3か月ほど経った。
氷精霊たちは長を決め、住処を作り、このラテスの地で動き始めている。
先日拠点となる町「スノウタウン」をスノウアースの最北端近辺に作り終え、現在はアイスランドの活用方法について話を詰めているところだと報告が上がってきた。
また、トリル人の方も召喚した草原近辺にいくつかの集落を作り、そこを拠点として思い思いに生活しているようだ。
あちこち旅してまわる冒険者もいれば、拠点に留まり農業を営みながら平和に暮らす者もいる。
中にはラテス村や要塞都市エクレアへとたどり着き、そこで職を得ている者もいるらしい。
そして先日、ラテス村やエクレアの住民たちが「トリル人の暮らす地域までの道を作りたい」と提案してくれた。
こうして他国との交流が生まれるのは嬉しいことだ。
道ができれば、その近辺の開発も進むだろう。
宿ができて、飲食店やら何やら店ができて……
「ハク、次の休み、草原あたりまで行ってみようか」
「はいっ! 遠出は久しぶりですね」
神力の使い過ぎで倒れて以降、無茶な詰め込み型のスパルタ教育はなくなったが。
それでもリエンカ家での仕事と授業、宿題、そしてラテスでの通常業務と諸々立て込んでいて、この3か月ほとんど遠出はできていない。
一度エクレアのヴァリエ王に茶会に誘われて行ったくらいか。
「最近いろいろ任せてほったらかし気味でごめんな」
「いえそんな。悠斗様が頑張ってるの知ってますから」
――ああ本当、ハクがいい子で助かる。
でも甘えすぎるのはよくないよな。うん。
ハクは文句とか不満とか言わない子だし、こっちが察してやらないと絶対無理するタイプだからな……。
「……ねえ神乃悠斗」
「うん?」
「たまには私も、神様活動についていってあげてもいいわよ」
「え、でも忙しいんだろ? べつに無理しなくても」
「――忙しいは忙しいけど、でもちょっとなら君のために時間を割いてあげてもいいかなーって。いつも頑張ってるご褒美、みたいなものよっ」
ほう?
なるほど仲間はずれが嫌なのか。
素直に一緒に行きたいって言えばいいのに。
まったくしょうがないヤツだな。
最近、だんだんフィーネの心の内が読めるようになってきた。
「じゃあおまえも来るか?」
「! 行くわ!」
もじもじしていたフィーネは、一気にパアッと表情を輝かせる。
それはもう、「こいつ自分の気持ち隠す気あんのか?」と思わずつっこみを入れたくなるくらいに。
――でもまあ、そういうところも可愛――いや、うん。
まああれだな。
結局オレは、こうしてころころと表情が変わるフィーネが――。
「仕方ないな。じゃあ連れてってやるよ」
「仕方ないってなによ! 名門神族である私が同行するって言ってるのよ? もっと素直に喜びなさいよっ」
「あー嬉しいなんて光栄なんだありがとうございます(棒」
「ちょっと何よその言い方っ!」
「べつにー?」
そんなやり取りをしていてふと気づいた。
うん。オレも大概だな!!!
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