第179話 いつの間にか有名人みたいになってた

 翌日からは、すっかり通常通りの生活に戻った。


 午前中は神鏡への神力奉仕とフォルテの補佐、午後は神様活動コンサルという業務をこなしつつ、名門神族として必要な知識を詰め込んでいく。

 1日にこなす神様活動コンサルの数を少し減らしたことで負担も減り、これならば問題なく続けていけそうだ。


 昼食は、基本的にはフォルテと2人でとることになった。

 以前は毎日ルアン先生がつきっきりでマナー講座をしてくれていたが、昼休憩くらいは休んだ方がいいという方針に切り替えられた。


「神様活動コンサル、どんどん希望者が増えていくわね。今や悠斗くん、リエンカ領内で有名人みたいな扱いだもの。神様活動に力を入れている神族で知らない子、いないのじゃないかしら」

「オレのやり方を受け入れてくださったフォルテさんのおかげですよ」


 ありがたいことに。

 噂が噂を呼んで、常に数か月先まで予約で埋まっている状態だ。


「実際、効果もすごいのよ。悠斗くんが来る前に比べて、リエンカ領における神様活動の実績が2倍以上になっているわ。普通に考えればありえないことよ」


 最近は、ほかの名門神族からもいったい何をしたのかと質問攻めにされるらしい。


「モモリンを始めとした特産品を爆発的にヒットさせて、領内の活動実績を倍にしてるあなたの存在がすごく気になるみたいで、みんな会いたがって大変よ」

「いやあ、オレはリエンカ家のお役に立てればそれで……」


 正直、人付き合いはあまり得意ではない。

 目立つような場に赴くのは極力避けたかった。


「あなたの星――ラテスだったかしら。あそこの力もうなぎ登りよね」

「おかげさまで。一応一通り開拓を済ませたことと、それから氷精霊と人族を増やしたので、多分その影響ですね」

「……開拓や召喚を進めれば星の力が増えると思っているところがすごいわよね。実際、本当に増えるし」


 フォルテは苦笑し、ため息をつく。


「普通は違うんですか?」

「そんな簡単に増えたら苦労しないわよ。普通は、むしろ減るものなのよ。本来、資源は有限だもの」

「な、なるほど……」


 たしかに地球でも、環境破壊が深刻だった。

 持続可能な開発目標をって、SDGsがどうとかよくニュースでやってたな。


 でも、オレの中ではまだまだだ。

 数値は高くても密度はそうでもないらしいし、神力の扱いも下手くそだし。

 ランクAになったら、フィーネに言いたいこともある。

 星をもっと充実させて、ハクと一緒に冒険するという夢もある。


「そのうち、ランクSSの聖神になったりしてね」

「ただの転生者には荷が重いですよ……」


 ランクSSの聖神というのは、神界に1人しかいない最上位神族のこと。

 神界におけるすべての決定権を持っており、聖神の決定は全世界の理となる。

 その力は神界や天界はもちろん、各神族が管理している星にまで及ぶという。


 ――すごいよな。

 オレなんかには想像もできない世界だ。


 でもいつか、いつか一度くらいは会ってみたい。気もする。

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