第178話 からかいたくなるフィーネさん
夜、夕飯を食べ終えてのんびりしていると、フィーネが帰ってきた。
「ただいまー」
「おお、おかえり」
「おかえりなさいませっ」
フィーネは鞄をハクに預け――ようとしてふと何かを考え、「いいわ」と断って部屋に自分で持って行った。
「――ぼ、僕なにかしたでしょうか」
「いや、フィーネも少しは成長したってことじゃないか?」
「?」
「ほら、ハクも正式に家族になったわけだし。いつまでも神様アイテムや神獣として扱うのは良くないと思い始めたんじゃないかって」
「!?」
一緒に暮らし始めて以降、ハクがどれだけ自発的に動き役に立っているか、フィーネも見ているはずだ。
ただ使役されるだけの存在ではないことくらい、きっと気づいている。
そしてそれをきちんと受け入れていくのが、フィーネのいいところだ。
「今日は何を食べたの? なんかいい匂いがするわね」
「ふっふっふ。今日は精霊祭で買ってきたあのチーズフォンデュだったんだな」
「はあ!? ずるいじゃない私がいないときに食べるなんてっ! 私も食べたかったんですけど!!!」
フィーネは悔しそうに口を膨らませ睨んでくる。面白い。
「めちゃくちゃうまかったなー。残念だったなフィーネ、食べられなくて」
「――っ! なんなのよっ! べつに私はもっとおいしいもの食べてきたし、そんなの全然悔しくないんだからっ」
そうそっぽを向きつつ、フィーネの目にはうっすらと涙が――
「っておい待て泣くなよ。ごめんって。まだあるし、また今度やるからさ」
「泣いてないわよ馬鹿っ!」
まさかチーズフォンデュ1つで大の大人(?)が泣くとは思わなかった……。
こいつ生きてる年数的にはオレより年上のはずだよな?
そんなに食べたかったんだろうか。
「どうしてもっていうなら、材料まだあるぞ」
「1人でやったって楽しくないでしょ!?」
「――ああ、なるほど。混ざりたかったのか」
「――っ! 違うわよっ! 気にしてないって言ってるじゃないっ」
こいつも何だかんだで実はけっこう寂しがり屋なんだよな。
やっぱり金持ちは人に囲まれているようで孤独になりがちなんだろうか。
「そういえば、シュワシュワジャムと森精霊のバターチキンカレーとキャンディス、仕入れの目処が立ったらしいぞ。それでプレゼント用のラッピング案なんだが」
フィーネにハクから渡されたデザイン案を渡す。
「……いいわね。箱とか袋が透明なことでジャムのキラキラが目立つし。3つセットを箱詰め、1つずつのばら売りを袋って仕様にするのはどう? 見慣れないジャムだし、最初から3つ買うのはハードル高いって意見もあると思うの」
「おお、なるほど。それいいな」
「それから3つセットは中身を選べるパターンもあると嬉しいわね。セットというより、あくまでプレゼントとか持ち寄り用って感じかしら」
「分かった。話をしてみるよ」
なんというか、こういうフィーネを見ているといつも思うけど。
適材適所って本当大事だよな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます