第175話 フィーネが作った卵がゆだと……
――この程度で倒れるってのはあれだな。
もっと力をつけないと。
オレは今、神界の誰よりも高い神力を持っているらしい。
それはもう、大神殿の計測器が壊れるほどに。
でも、神族の力は神力だけでは測れない。
フォルテは、オレが最強なのはあくまで数値だけであって、総合的に見るとやっぱりまだまだ未熟さが目立つと言っていた。
いくら膨大な力を持っていても、決して無限なわけではない。
その有限な神力を無駄なく有効に使えて初めて一人前なのだ。
また、ランクBになったことで、オレはハクの正式な所有者になっている。
これはつまり、ハクにオレの力が流れる、ということらしい。
いくら家族だ何だと言っても、ハクが神様アイテムとして創られた神獣である事実を変えられるわけじゃない。
そんなことを考えていると、コンコン、とドアをノックする音が聞こえてドアが開いた。
どうやらフィーネが何か持ってきたらしい。
「神乃悠斗、卵がゆ作ったわよ」
「……え。おまえが?」
「ちゃんとハクに教えてもらったし、味見もしたから!」
「……お。おう。ありがとう」
見た目は――普通だな。うん。
土鍋の中で、やさしい色合いの白と黄色がつややかに混ざり合い、ふわっと漂う香りとともに湯気を立てている。
――うまそう……ではある。
いやでもまだだ。まだ油断はできない。
何か余計な調味料を入れてるとか、実は米に火が通ってないとか、卵が殻ごと入ってるとか、フィーネなら余裕でありうる。
そう思い恐る恐る口にしたのだが――
「おおお、うまい! ちゃんと卵がゆだ!」
「……君今すごく失礼なこと言ってるの分かってる? 私は料理の腕はあれかもしれないけど、舌は確かよっ!」
フィーネは頬を膨らませ、ぷいっとそっぽを向いてしまった。
「悪い悪い。冗談だよ」
「――まったく。でも本当、どうしてあんな無茶したの? いくら勉強や修行があるにしたって、普通に生活してて神力切れで倒れるなんて聞いたことないわよ」
「いやあ、神力高いって言われたし、いけるかなーと。というか体力以外で倒れるって発想がなくて」
神力ってただのプラス要素だと思ってたけど。
切らしたらいけないもんなんだな……。
「神力は、神族にとっては血液のようなものなの。人間だって血がなくなったら倒れるし死ぬでしょ? それに神力が高いっていうのは、あくまで最大値が高いってことよ。回復に要する時間が減ったり、無限に使えたりするわけじゃないの」
「まじか……」
「回復速度や密度に関しては、また別の問題よ。修行によって強化はできるけど、君程度の付け焼き刃で上げられるものじゃないわ」
ぐ――ややこしいな!?
神力には「高さ」のほかに「密度」があるのか。
「君は今まで力をコントロールする必要がなかったから、何というか無駄な放出が多いのよ。ちょっと手を洗いたいだけなのに、水道の蛇口を最大限ひねってる――みたいな説明なら分かるかしら」
「お、おう」
あれか、結界への神力奉仕のときも言われたけど、それ以外の神様活動でも同じ問題が発生してるってことか。
まずは適切な制御をできるように頑張らなきゃな……。
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