第174話 反省

「……んん」

「神乃悠斗っ!!」

「悠斗様っ!」


 気がつくと、またまた見知らぬ異世界転生していた――

 なんてことはなく。

 オレはラテスの自宅のベッドに寝かされていた。


「ええと……たしかオレ、フォルテさんの部屋で倒れて――」

「君ほんと馬鹿じゃないの!? 神族でそれだけ力があって倒れるなんて聞いたことないわよっ!」

「――はは、ごめん。思ったより体力削られてたっぽいわ」

「し、死んだらどうしようって、私――っ」


 フィーネは顔を歪ませ、ボロボロと涙をこぼす。

 とめどなく流れる涙を必死で拭っているが、まったく追いついていない。


「ちょ、泣くなよ大げさだな……ちょっと立ちくらみがして倒れただけだよ。神族って、処刑か自死でしか死なないんだろ?」

「そうだけどっ! でも君は普通じゃないからっ……何か体内でバグが発生したのかと思ったのよっ」

「いやいやバグって」


 話を聞くと、オレが倒れたとフォルテから連絡があり、ハクとフィーネでこちらの家に運び込んだらしかった。


 時間はそこまで経ってない。

 けど――ずっと心配して見ててくれたんだろうか?


 フィーネの後ろで、ハクも不安そうな表情を浮かべている。


「心配かけてごめん。でももう平気だから。仕事に戻らないと」

「はあっ!? 今日はもうお休みよっ! 明日まで休みってことになったから、これを機にしっかり休息を取って!」


 おおう。


「……ごめん。ハクもごめんな」

「い、いえ。無事ならそれで。でもびっくりしました……」


「ハクから聞いたわ。昨日、氷精霊と人族を一気に救済召喚したんですってね。ほんっと、これだから何も知らない成り上がりは困るのよ」

「? 何がだよ」

「救済召喚は、本来ランクA以上の神族が行なう神様活動なの。でもこの星は生き物が誕生しないし、君は元々神力が高かったから、少しなら……と思ってカタログを渡したけど。まさか休みなしで動いてる中そんな無茶するなんて思いもしなかったわ」


 いやだからそういうの先に言って!?

 初耳なんだが!!!


「すみません、救済召喚にかかる負担のこと知らなくて……」

「いやハクは悪くないだろ」

「まったく、私がいるからいいものの、神様が倒れるなんて本来なら星に悪影響が出るところよ! もっと神族だという自覚を持ちなさい」


 まあ、ランクBになってその程度のことも把握してなかったオレにも責任はある。

 あるけど。


「そういう重要な情報はちゃんと事前に話してくれないと困るんだが」

「それはまあ――悪かったわよ。だって君、すごい速度で成長していくんだもの。早すぎて頭が追いつかなくて」

「……はあ。まあ大事に至らなかったからよかったけど」

「とにかく明日までは安静に! 分かったわね!」


 フィーネはそれだけ言うと、ハクを引き連れて部屋を出て行ってしまった。


 ――あんな顔でぼろ泣きしてるフィーネ初めてみたな。

 あいつもあんな顔するんだ……。

 ハクも無表情なようでだいぶうろたえてたし、手が震えてたし。

 今後はこういうことがないように気をつけよう。

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