第173話 これだから社畜は(主にオレ)

「あと1~2組くらい召喚しようと思ってたけど、トリル人たちの行動観察もしないといけないし、いったんはこれで様子を見ようか」

「そうですね。一気に増えすぎると混乱しますし、時間も時間なのでその方がいいと思います」


 トリル人への対応を終える頃には、もうだいぶ薄暗くなっていた。

 氷精霊のとき同様、いったんは【カプセルホテル】へ案内し、当分はそこで暮らしてもらうことにする。


 本当は1からすべて自分たちで――というのが理想ではあるけど。

 でも子どももいるし、さすがに全員野宿で、というわけにもいかないよな。

 部屋数には余裕があるはずだし、これで雨風はしのげるだろう。


「んじゃ、帰ろうか。今日はけっこう頑張ったよなー」

「とっても充実した連休でしたね。でも、悠斗様は明日からまたお忙しいんですよね? 大丈夫ですか?」

「うーん。まあどうにかなるだろ」

「無理はだめですよ。今日の晩ごはんは僕が作りますので、悠斗様はあとはもうゆっくりしてください」

「おお、サンキュ。でもハクもあまり無理すんなよ?」


 神獣姿のハクの背中に乗って移動しながら、そんな他愛もない会話をして。

 心地よい疲労感はありながらも、それを上回る充実感もあって。


 だからオレは、自分の体調が悪いことに気づいていなかった。


 ◇ ◇ ◇


 楽しかった2連休も終わって。

 今日からまた、仕事と勉強の日々が始まる。


「それじゃ、行ってくるよ」

「いってらっしゃい」

「いってらっしゃいませ」


 昨日頑張りすぎたせいか若干体がだるいが、今日も神様活動カウンセリングの予約は最大まで埋まっている。

 地道な活動の甲斐あって、リエンカ領民の神様活動は実績がうなぎ登りらしい。

 オレにできる仕事なんてまだまだごく一部に過ぎないけど、それでも確かな実績として目に見える変化があるのは嬉しいものだ。


「おはようございます」

「悠斗くん、おはよう」

「おはようございますハルト様」


 フォルテの部屋に行くと、フォルテ、そしてルアン先生がいた。


「――悠斗くん、なんか疲れているようだけれど。大丈夫?」

「え? ああ、これくらい平気ですよ」

「連休というのは心身を休めるためにあるんです。それなのに疲れて戻ってきてどうするんです?」

「す、すみませんつい……」


 まさかこの歳になって、連休中に体力消耗しすぎて怒られるとは思わなかった。

 でもたしかにちょっと頑張りすぎたかもしれない。

 今日は帰ったらちゃんと休も――


 ――う、と思ったそのとき。

 視界がぐらつき、急に体が言うことをきかなくなる。


「ちょっと悠斗くん!?」

「ハルト様っ!」


 ああ、この感覚。

 デスマ続きの中倒れた転生時もこんな感覚だったっけか。

 昨日、夜もトリル人たちの動向が気になってあんまり眠れなかったしな。

 やっぱ神族でも休息は必要か――


 そんなことを考えながら、オレはそのまま意識を失ってしまった。

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