第172話 前途多難なモフモフ活動
人族を召喚したあと、いつもどおり最低限の説明をして。
今回はそれに加えて、この辺一帯は自由に開拓してもいいと付け加えた。
8769星――トリル星と呼ばれていたらしい星の人族たち250名は、それを聞いて驚き戸惑いを見せる。
だが一部の冒険心に火がついたのか、何となくいくつかのグループに分かれ、それぞれ開拓する方向やら今後のことやらを話し始めた。
「たまにこいつ――ハクが調査に行きます」
「? その嬢ちゃんが? いやあ、でも1人で来られてもなあ」
「危険じゃないですか? この辺まだ未開拓ですし」
ハクを見て、トリル人たちは口々に不安を吐露し始めた。
それは嫌味を言っているとか、そういうことではなく。
単純にハクのことを心配している様子だ。
そんなトリル人の様子を見て、ハクは不満そうに口を膨らませる。
「……ハク、実力を見せてやればいいんじゃないか?」
「実力、ですか……?」
ハクはしばらく考えたのち、近くの森まで歩いていく。
そして――
「えーい」
「とおーっ」
一緒にラテスを開拓したとき同様、大人が両手で抱えきれないような太さの木を素手でバッサバッサと伐採していく。
そして木材と化した木を軽々と運び、あっという間に山のように積み上げた。
そんなあり得ない光景を、トリル人はただただ呆然としながら見つめている。
「どうですか? 僕の力、分かっていただけたでしょうか」
「…………」
ハクはいつもの淡々とした口調で、呼吸を乱すことすらなく確認をとる。
――いや、そこまでするとさすがに。
これ、怖がられたんじゃないか?
ハクの気持ちも分かるけど、でももう少し仲良くやってほしいんだけど……。
そう思ったが。
「す、すげええええええええええええええ!!!」
「嬢ちゃん何者なんだ? 今のいったいどうやって」
「可愛いのになんて強いの……」
トリル人は態度を一変させ、ハクを囲み始めた。
が、しかし。
これがフィーネならドヤ顔でふんぞり返るところだろうが、ハクはこういう状況にはめっぽう弱い。
「え、あのっ、えっと……あ、あまり近寄らないでくださいっ」
困惑し、さっきまでの毅然とした態度から一気にうろたえ始める。
そしてオレの方を見て、助けてと訴えかけてきた。
「耳可愛いっ! ねえこれ本物?」
「髪ふわっふわ!」
「や――触らないでくださいっ! 僕を撫でまわしていいのは悠斗様だけですっ!」
うおおおおおおい待てえええええ!
だからそういう誤解を招くようなこと言うなああああああああああああ!!!
ハクは一瞬の隙をついてトリル人の壁をすり抜け、オレの後ろへと回り込んで隠れてしまった。
服をぎゅっと掴み、警戒した様子で威嚇している。
「ハク、そんなんで大丈夫か?」
「うう……。どうしてみんな僕に触りたがるんですか……」
いやまあ、うん。
可愛いし、警戒心強めな辺りが小動物みたいだし。
構いたくなる気持ちは分かる!!!
――というのは黙っておこう。
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