第170話 氷精霊が仲間に加わった

「もちろん拒否することもできますが――できれば受け入れて、この地の管理者になっていただけると嬉しいです」


 氷精霊は、周囲を見回し何やら考えこんでいる。

 ダメ――か?


「――この地はとても力が強いように感じます。すでに別の氷精霊がいるのではないですか?」


 あ、なるほど。そういうことか。


「氷精霊はあなた方だけです。この地の力が強いのは――何というかその、いろんな条件が重なって偶然結果的にこうなった、と言いますか」

「偶然!? 結果的に!? 私はてっきり、これだけの土地であれば上位精霊がいるものと――。ほ、本当によろしいのですか?」

「もちろんです。ちなみにもう1か所、氷で覆われたアイスランドという大陸もありまして――できればそちらも自由に使っていただければと」


 人族はまあ仕方がないとしても。

 同じ種類の精霊をあまりあちこちから引っ張ってくるのは避けたい。

 精霊同士の相性が悪ければ、星に悪影響を及ぼす可能性もある、と以前リエンカ家で読んだ本に書かれていた。


「……ありがたい話ですが、実は、私たちの長が先日突然倒れ、そのまま亡くなってしまったのです。今、私たちには長がいません。そこで、新たな長を決めて体制を立て直す時間がほしいのですが」

「もちろんです。急ぎませんので、この土地でじっくり立て直してください」

「何から何まで本当にありがとうございます。それでは、ひとまずは私アイスが、責任を持ってこの地を預からせていただきます」


 代表(?)の氷精霊が頭を下げると、後ろに控えていた52名もそれに続いた。


「アイスさん、ですね。よろしくお願いします。――ああ、そうだ。住む場所に困るようでしたらこちらを」

「!?!?」


 オレは臨時の宿として、神様アイテム【カプセルホテル】を2棟出現させた。

 これだけあれば、とりあえず部屋に困ることはないだろう。


「一瞬にしてこんな立派な建物を建ててしまうとは。これが神様の力……」


 突然目の前に現れた高級ホテル並みの建物に、アイスもほかの精霊たちもポカンと口を開けて見上げ、言葉を失っている。


「ほかにも、困ったことがあれば言ってください。あ、食料もいりますよね。【カプセルホテル】の地下にある食糧庫に食料を入れておきます。それからこれを――」


 オレはほかの住民たち同様、氷精霊にも強化ガラス端末を渡していった。


「こ、このガラスの板はいったい?」

「これは電子マネー――つまりお金ですね。お金を管理したり、不用品や商品を換金したり、逆に買い取ったり、連絡を取ったりできる特別な端末です。認証システムが働くので本人以外には使えません」

「こ、こんなガラス1枚にそんな高度な技術が!?」

「あはは。使い方の詳細は、ここをタップすると出てきます。ほかに分からないことがあれば遠慮なく聞いてください」


 ――よし。


 使い方も注意事項も伝授したし、連絡先も伝えた。

 あとは自分たちでどうにかするだろ。


 オレとハクは、次の目的地――

 新たな人族を召喚する予定地へと向かうことにした。

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