第169話 新たな管理者・氷精霊の召喚

 連休2日目の午後からは、いよいよ新たな精霊と人族の救済召喚。

 まずはスノウアース国(として機能させる予定の土地)へ行き、【救済措置候補者カタログ】で氷精霊の召喚を行なう。


 ●氷精霊 53名

 12356星に住む、氷を操る精霊。雪原地帯に住む。

 星の温暖化で生活環境が悪化し、弱体化が進んで絶滅の危機。

 真面目で伝統・規律を重んじる性質が強い。

 500000G


「53名……今更だけど、2か所に配置するにはちょっと少ないかな」

「氷精霊は周囲を吹雪かせることで広範囲を掌握できる精霊なので、問題ないかと思います」

「そうなのか。というか吹雪かせるって……。スノウアース周辺に行く人族が遭難しないように祈ろう」

「そうした災害もまた、文明を発展させるうえで必要なことです」

「お、おう」


 ――まあ、そうなんだよな。

 何でもかんでもオレが監視して手を出してたら、文明を発展させる原動力がなくなってしまう。

 ある程度「ただ見守る」覚悟も必要ってことか。


「分かった。じゃあこの氷精霊53名を召喚しよう」


 いつもどおり、カタログに手をかざしてスキル【召喚】と唱える。

 一瞬、少し離れた場所に強い光が発生し、そしてざわざわと騒めき始めた。


 ――この一連の流れにもだいぶ慣れてきたな。


 近くまで行くと、突然見知らぬ土地に召喚された氷精霊たちが困惑した様子で周囲を窺っていた。


「! そ、そこの方! この辺に住まれている方だろうか」

「――あ、はい。あの」


 霧とダイヤモンドダストが漂う視界の悪いこの環境で、早くもオレとハクを見つけ出すとは。

 さすが雪原に慣れている氷精霊だな。


「突然現れてすまない。私たちは人ではないが、決して危害は加えない。だからどうか教えてほしい。……ここはどこなんだ?」


 1人率先してオレの方に歩いてきたその女性は、薄い水色の美しい髪を持った女性だった。

 凛々しさを感じさせる瞳と透き通るような白い肌を持つその女性は、またしても絶世の美女である。


「初めまして。オレは神乃悠斗といいます。こっちはハク。ここはラテスという星のスノウアースという土地で、あなた方を召喚したのはオレです」

「!? なっ――し、召喚!? まさか。こんなに多くの精霊を一度に? ――ああ、いや、あなたは人ではないな。その横の子も……どちらかというと私たちと似た何かを感じる」

「オレは神族――いわゆる神様で、ハクは神獣です」

「!?!?」


 ――ですよねー。

 目の前に突然神様が現れたらそうなりますよね!!!


「――いやでも、これだけの術を使われたのは信じるしかあるまい。神様とは気づかず、大変失礼しました。それで、私たちはなぜここに呼ばれたのでしょうか」

「……ええと。率直に事実を伝えますね。あなた方のいた雪原は、温暖化の影響でいずれ消失します。そこで救済措置として、この星に召喚させていただきました」


 避けられない現実を突きつけられ、氷精霊たちは表情を曇らせる。

 が、そうした運命にあることに薄々気づいていたのだろう。

 取り乱す様子はなく、案外冷静だった。

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