第165話 シュワシュワジャムを求めて
アドからレトルトのバターチキンカレーを受け取り、オレたち3人はシルヴァに勧められた「シュワシュワジャム」なるものを求めて歩くことにした。
が、どの店にも魅力的な商品がずらりと並んでいる。
結局、シュワシュワジャムにたどり着く前に相当な量の買い物をすることになった。
フィーネも、財力にものを言わせて片っ端から買い漁っている。
「神界には上位精霊がたくさんいるんだろ? それでもそんなに珍しいのか?」
「珍しい――というのもあるけど、何より味が素晴らしいわ。こんなにおいしいものがこんな安くで買えるなんて驚きよ。全部買い取っちゃいたいくらいだわ」
それはほかの精霊の迷惑になるからやめてくれ。
「おまえが名門神族だってことは伏せてるんだから、あまり目立つ行動するなよ」
「――あ、そうだったわ。忘れてた」
こいつは本当!!!
しかしまあ、名門神族であることは隠しているにしても。
フィーネとハクが放つオーラ尋常じゃないな。
美少女って言葉では足りない、人間離れした美しさ。
これだけ多くの精霊たちが行き交っているのに、まったく紛れる気配がない。
2人の周囲だけ別の空気が流れている気さえしてくる。
――いやまあ、実際人間じゃないんだけどさ。
でもオレだって人間じゃないのに!
なんだこの圧倒的なビジュアル差!!!
そんな2人が浴衣なんか着てるもんだからもう……。
周囲の精霊たちも、多くが2人の姿に見惚れている。
フィーネはコミュ障なくせにそうした視線には無頓着で、気づく様子すらない。
やっぱり見られるのは慣れてるんだろうか?
一方、ハクは困惑し、おろおろしている。
「あ、あのっ、何かすごく見られているような!?」
「そう? 気のせいじゃない?」
「ええ……。そ、そうでしょうか……」
「そうよ。それよりほら、これすっごくおいしいわよ! ハクも食べなさい」
「あ、ありがとうございます……」
だいぶ慣れたとはいえ、ハクはまだまだフィーネに強く出れない。
周囲を気にしつつも、フィーネからのお裾分けを大人しく受け取った。
「神乃悠斗もほしいならあげるわよ」
「……うん? あ、ああ、じゃあもらおうかな」
フィーネが渡してきたのは、モモリンをカットして飴でコーティングしたお菓子だった。
周囲の飴がパリパリしていて食感もよく、モモリンの甘酸っぱさとも相性抜群だ。
「けっこううまいな」
「でしょ? ……でも君がモモリン飴を食べてるとすごくシュールね。びっくりするくらい似合わないわ。――っく、ふふっ」
「うるせえ笑うな」
そんなこんなでだいぶ時間がかかったが。
1時間ほど経ったころ、ようやくシュワシュワジャムの置かれている店へとたどり着いた。
シュワシュワジャムは、黄金色の美しく透き通ったジャムだった。
そしてジャムらしい粘度がありながら、小さな気泡がまるで液体の中のように下から上へと上がっていく。
その気泡は星屑のようにキラキラと輝いている。
「いらっしゃいませ、ハルト様。シュワシュワジャム、お気に召しましたか?」
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