第164話 バターチキンカレーうめええええ!

「うふふ。ハクちゃんは相変わらずハルト様が大好きね。今日は、とっておきのものをたくさん放出していますのよ。突きあたりのお店にあるシュワシュワジャムは、この精霊祭に向けて開発した新商品なんです」


 シュワシュワジャム……気になる……


「炎精霊さんと水精霊さんと協力して作ったコラボ商品なんです。よろしければぜひ、お味見だけでもしていってくださいね」

「ぜひいただきます」

「それじゃ、わたしは待ち合わせがありますのでこれで」


 シルヴァが向かった先に目をやると、遠くの方で水精霊のアクアが手を振っていた。

 そしてオレたちの存在に気づき、会釈する。


 このあともすれ違う多くの精霊と会話を楽しみ、オススメの品を聞いて、いくつか試供品ももらった。

 この精霊祭は新商品のお披露目会も兼ねているらしく、各店に「新商品」「試食できます」などのPOPが掲げてある。

 その中には、なんとバターチキンカレーを提供しているアドの姿もあった。


「アドさん、こんばんは」

「! ハルトさんっ! ちょうどよかった。以前いただいたバターチキンカレーを料理長に研究してもらって、改良を重ねてようやく完成したんだ。サービスするから、味見も兼ねてぜひ食べていってよ! 皆さんもどうぞ!」

「おおー! うまそう!」

「へへ、研究にはボクも関わってるんだよ!」


 バターチキンカレーは、以前渡したカレーの味が驚くほど見事に再現されていた。


 ――再現?

 いや、違うな。再現以上の出来だ。

 とにかくうめええええええぇええぇぇええ!!!


 ほろほろと口の中で解けるほどに煮込まれたチキンのうまみ、それからスパイスとバターの香りがしっかりと立っていて、しかもバランスも絶妙。

 こんなうまいカレーは初めて食べたかもしれない。


 フィーネとハクも、一口食べて驚いたような表情になり、それから無言のまま一気に完食してしまった。


 うん、分かる。

 本当にうまいもの食うと、つい無言になるよな!!!


「オレの知ってるバターチキンカレーの何倍もうまいよ。特にスパイスの調合が絶妙だな。さすが、植物のことを知り尽くしてる森精霊だ」

「本当!? 嬉しいよ、ありがとう!!!」

「こちらこそ。こんなうまいもの食わせてくれてありがとな」


 キラキラと目を輝かせて喜ぶアドの無邪気さに、思わずこちらも笑顔になる。

 周囲には、ほかにもカレーを頬張っている精霊が何人もいて、皆その芳醇な香りとおいしさに恍惚とした表情を浮かべている。


「これって持ち帰りもできるのか?」

「できるよ! 以前ハルトさんがくれたパウチ?だっけ、あれの技術も開発してもらったんだ!」

「そうか、あれってたしか耐熱性樹脂なんだっけ?」

「ボクは詳しいことは分からないけど、トゥリが樹脂と鉱石から抽出した油をなんかいろいろして作れるって説明してたよ!」


 トゥリってたしか、ラテス村の設計をしてくれた森精霊だよな?

 博識そうだとは思ってたけど、そんな知識もあったのか。


「それじゃあ、10袋ほど買って帰るよ」

「そんなに!? やったー! ありがとう!」


 いつも世話になってるし、リエンカ家にもお裾分けしてやろう。

 そしてあわよくば、神界に卸す商品の1つに……!!!

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