第8章 神様ランクB 星の充実を目指して

第163話 いざ「精霊祭」へ!

 夕方7時ごろになり。

 オレとハク、フィーネはラテスの森の「精霊祭」へと向かった。

 いったいいつの間に飾り付けたのか、ラテスの森の入り口付近から既に美しい装飾が施されている。


 それは、人間の世界ではまず見られない、幻想的な光景だった。


 まず、暗くなった森を照らすのは、ふわふわ宙に浮かぶ色とりどりの光の玉。

 炎精霊の霊力で生み出しているらしいそれは、電飾などの強い光とは違う優しさを持ちながら、それでいてしっかりと森を照らしてくれる。


 ――す、すげえ。

 こんな幻想的な光景、初めて見た……。


 光の玉にそっと触れると、まるで重力から解放された綿のようにふわっと舞って上昇する。

 不思議と熱さは感じなかった。


 また、周囲の木々や道、そこにずらっと並ぶ露店自体もキラキラと輝きを放っているようで、空はたしかに暗いのに、もう夜のはずなのに、くっきりとした輪郭を見せている。


 そのほかにも、蝶の形の動く光が、羽を羽ばたかせてあちこち飛び回っている。

 露店に並ぶ品々も、いつもよりいっそう魅力的に見えた。


 ――でも、ハクやフィーネはこんなの見慣れてるんだろうな。


 そう思ったが。

 2人ともオレ同様、その光景にくぎ付けになっている。


「ねえ神乃悠斗! 見て、すごいわよっ!」

「お、おう。でもおまえはこんなの見慣れてるんじゃないのか?」

「そんなことないわよ。精霊祭に来るなんて初めてだもの。普通は精霊祭に呼ばれたりしないのよ? 精霊にとって、お祭りはとても神聖なものだから。たとえ神族であっても入れないわ」


 ――うん?


「え、そうなのか?」

「そうよ。こんなところに呼んでもらえるなんて、よほど慕われてるのね」

「ハクが顔を繋いでてくれるからな。本当に助かってるよ」

「そ、そんなこと! 悠斗様の人望あってこそですっ」


「あっ! ハルト様! 本日は精霊祭へお越しくださりありがとうございます。こうしてまた開催できたのも、ハルト様のおかげです」

「アスタさんこんばんは。そんな、こちらこそお招きありがとうございます」

「今日は皆様お揃いなんですね。ゆっくり楽しんでいってくださいね」


 アスタは仕事中だったらしく、オレたちに一礼すると、書類と周囲の様子を確認しながら去っていった。


「ハクちゃーん! 来てくださいましたのね! まあハルト様も! それから――フィーネさんだったかしら。以前お茶会に来て下さったわよね」

「えっ、あっ、ええ……」


 フィーネは相変わらずコミュニケーション能力が迷子になっている。

 本当、いつもの図々しさと足して2で割りたい。


「シルヴァさんこんばんは」

「ああーっ! ハクちゃん今日も可愛いわーっ」

「! あ、あんまり抱きつかないでくださいっ! 僕をそんなふうに撫でまわしていいのは悠斗様だけですっ」


 うおおおおおい!!?

 変な誤解が生まれるからやめれ!!!

 やってない! オレはやってないぞ!!?

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