第162話 浴衣美少女に囲まれるって明日死ぬのかな

「――え? 精霊祭?」

「ああ。今日の夜7時から、ラテスの森で開催されるらしい。それでその……よければ一緒にどうかなと思って」

「へえ、楽しそうじゃない。いいわよ」


おお、やった!


「……何よ、やけに嬉しそうね。そんなに私と行きたかったの?」

「――は!? い、いやべつにそういうんじゃないけど。でもほら、3人の方が楽しいだろっ!」

「ふーん? まあいいけど。――ああ、そうだわ。せっかくだし、君のいた世界の浴衣っていうのを着ていこうかしら」

「!?」


なん……だと……

こんな超絶美少女が浴衣を着てオレとお祭りに行ってくれるなんて、明日死ぬんじゃないか?


「ハクの分も用意してあげるわ。連れてきなさい。あ、君は着替え終わるまで入ってきちゃだめよ!」

「なっ――は、入らねえよ!」


というかそういうこと言われると逆に想像しちゃうから!

頼むから変なこと言わないでくれ!


2人が着替えてる間、オレは明日召喚する氷精霊と人族の選定をすることにした。

フィーネの部屋からは、何やらキャッキャと盛り上がる2人の声が聞こえてくる。


き、気になる……。


が、しかし。

あまり気にしているとうっかり変な想像をしてしまいかねない。

オレは強制的に思考に蓋をし、【救済措置候補者カタログ】に向き合った。


氷精霊には、氷の大陸と雪の大地の2か所を管理してもらおうと思っている。

そのため、ある程度の数がほしいところだ。


というか新しく創った土地にも名前つけないとな。

氷の大陸は――うん、アイスランドかな。

地球にも同じ名前の国があるけど、まあべつに異世界だしいっか。


雪の大地近辺は――スノウアース国にしよう。

火山島は――なんかもう馴染んでるし火山島でいいよな。


あとは砂漠近辺もなんか名前あった方がいいよな。

砂がサラサラしてるし、サラ砂漠でいいか。なんか言いやすいし。


つけた地名は、忘れないよう【ラテスの地図】に登録していく。


――だいぶ充実してきたな。

あとは今回の召喚が終われば、いったんはひと段落といったところか。

まあ、そこからが本当の始まりなんだけど!


「神乃悠斗、着替え終わったわよ」

「思った以上に動きにくいです……」

「ちょっとハク、そんな動くと乱れるわよ。数時間のことなんだから我慢しなさい」

「はい……」


つ、ついに2人の浴衣姿が!?


部屋を出ると、そこには美しく着飾った浴衣美少女が立っていた。

ハクの浴衣は、白地にピンク色の花が華やかに散りばめられたもの。

ピンクは一種類ではなく濃淡様々なものが組み合わさっており、花も大きさの違うものがバランスよく配置されている。

また、髪もアップにし、同じピンクの花の髪飾りでとめている。か、可愛い……。


フィーネの浴衣は、クリーム色の生地に簡略化された椿のような柄が大きく散りばめられたもの。

赤色と薄ピンク色の椿の隙間には、淡い緑で葉も描かれている。

大胆なデザインだが、金髪に美しい緑色の目をしているフィーネには妙に似合っていた。

フィーネも、髪をアップにして椿モチーフの髪飾りをつけている。


――す、すげえ。

髪アップにして浴衣着るだけでこんな変わるのか。


「――ち、ちょっと、何か言いなさいよ!」

「あ、ごめん。その……2人ともあまりに綺麗で言葉が見つからなくて」

「!?」

「なっ――! ま、まあ? 私もハクも元々超絶美人だものね。仕方ないわねっ」

「!?!?」


ハクは照れながらも耳をピコピコさせ、フィーネは赤面し、困惑した様子で視線を逸らす。


ああ、なんだこれ。

可愛い。愛しい。幸せすぎる。

神様ありがとおおおおおおおおおおおう!!!


オレも神様だけど!!!

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