第160話 やっぱ神界はブラック企業とは違うな!
「……仮に、なんだけどさ」
「え?」
「――あ、いや、やっぱいいや」
「何よ気持ち悪いわね。そこまで言ったなら言いなさいよ」
「まあ、近いうち言うよ」
「何なのよ。相変わらず変な子ね」
――変な「子」、か。
フィーネにとって、オレって何なんだろうな。
見た目年齢はオレの方が高いくらいだけど、実際はオレなんてやっぱ赤ちゃんみたいなもんなのかな。
「……オレ、頑張ってリエンカ家に相応しい名門神族になるよ」
「どうしたのよ急に。今日の君、何か変よ? ハクに振られたの、そんなにショックだったの?」
「違うわっ! というか振られてねえよ! オレは――」
オレは――
――いや今はまだダメだ。
ちゃんとランクAになって、名門神族として恥ずかしくない知識と振る舞いを身につけて、それから――。
「まあいいけど。でもほどほどにしなさいよ。でなきゃ疲れて嫌になるわ。本当、あの鬼家庭教師、限度ってものを知らないから」
「……私が何ですって? フィーネ様」
「!? る、ルアン!? な、何でもないわ。私はそろそろ仕事に戻るわねっ。神乃悠斗、またあとで!」
「お、おう……」
フィーネはそれだけ言うと、逃げるように部屋から出ていった。
「はあ。まったく、フィーネ様には困ったものです」
「ルアン先生は、ずっとこの家の家庭教師を?」
「ええ。クリエ様が幼いころから、ずっとリエンカ家の家庭教師をしています。フィーネ様は昔から勉強が大嫌いで。思うようにできないとすぐ泣き出すわ物を投げるわ逃げ出すわで……本当に大変だったんですよ」
な、なるほど……。
ルアン先生も苦労してんだな。
「あの……頑張れば、オレも立派な名門神族になれますかね」
「なれますか、ではなく、なるんです。私が必ずならせます」
「あ、はい……」
「……ですからハルト様は、要らぬ心配はなさらず課題に励んでください。転生者が名門神族に入るなんて、私の知る限り初めてのことです。それだけ、リエンカ家がハルト様の才能を買っているということですよ。もっと自信をお持ちください」
「ルアン先生にそう言っていただけると心強いです。ありがとうございます」
なんだ、この先生もちょっと怖いだけでめちゃくちゃいいヤツじゃねえか。
人をイメージだけで判断するのはよくないな。
「今日まで頑張れば、明日と明後日はお休みですよ」
「えっ?」
「何ですか、知らなかったんですか? 毎日詰め込み続けると、頭がおかしくなりますからね。心身を休める時間も必要でしょう」
「めっちゃホワイト!!!」
やっぱ神界はブラック企業とは違うな!!!
休み中は、進められてなかった救済召喚を進めるとしよう。
まずは氷精霊を召喚して、それから人族ももう少し必要だよな。
でも開拓の余力も残しておいた方がいいかな……
冒険者もけっこう出てきてるし、うまくいけば自分たちで開拓して新しい国を作ってくれるかもしれない。
……でもまあ、1日くらいはゆっくりしようかな。
ハクにもあまり構ってやれてないし。
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