第159話 ひさっびさのハードな日々

 今まで通りの神様活動と週3日のリエンカ家での仕事に加え、猛勉強が始まって。

 さすがのオレも、余裕がない日々を送っている。


 名門神族が幼少期から詰め込まれるはずの知識やマナーをほとんど知らないオレは、スパルタ家庭教師・ルアンのもと、必要な情報を1から叩き込まれた。


 というか!

 これこそインストールできるようにしておけよおおおおおおおおおお!!!


 ……まあでも、社畜だった頃よりはマシか。


「――そろそろ一度休憩にしましょう。休憩中も気を抜きすぎないように」

「は、はい……」


 オレはルアンが出て行ったのを確認し、ベッドにダイブした。

 仰向けになり、大の字になって天井を仰ぐと、体がベッド一体化するような心地良さを感じる。


 ――つ、疲れた。

 昔フィーネが逃げていたというのも分かる気がする。


「お疲れ様。そんな格好してたらルアンに怒られるわよ」

「――っうわっ! フィーネ」

「うわっとは何よ。せっかく労いにきてあげたのに」


 フィーネはテーブルに紅茶セットとお菓子が乗ったトレーを置き、ソファに座ってカップに紅茶を注ぎ始めた。

 ちなみにこの部屋は、リエンカ家の一室。

 まだ正式にリエンカ家の一員になったわけではないが、仕事と勉強でこの家にいる時間が多いため、早めに部屋を与えられることになったのだ。


「仕事と勉強は順調?」

「あー、どうかな。仕事はまあまあ順調かな」


 初回の神力奉仕で力が暴走して以降、クリエ指導のもと力を制御する方法を学び、今では問題ない範囲でじんわり力の放出ができるようになった。


 午後の神様活動改善に関する対応も、おかげさまで大好評だ。

 予定を管理している天使いわく、だいぶ先まで予約が埋まっているらしい。


 ――営業しなくてもどんどん話が舞い込んでくるってのはありがたいな。

 信仰を始めとしたオレの数値がどうなってるか怖いけど!!!


 でも正直、オレ個人としては慕われて悪い気はしない。

 というか素直に嬉しい。

 人間だったという経験がこんなに役立つとは思わなかった。


「でも君は、星の管理能力がとても高いから、本当は星と創造を司る名門神族に入った方がいいのかもしれないけどね。本当にうちでいいの?」

「この力はおまえにもらったも同然だからな。できれば神界とこの家のために使っていきたいんだ」

「ふーん。まあうちは大歓迎だけど」


 …………。


「そ、それよりフィーネ」

「?」

「おまえは今後、どうしていくつもりなんだ?」

「今後? どういうこと?」

「その……す、好きな相手とか、いないのかなって思」


 って――と言おうとしたが、途中でフィーネが勢いよくむせ込んだ。


「おい大丈夫か? 落ち着いて飲めよ」

「な、何なのよ突然っ! 君が変なこと聞くからでしょ!?」

「いやごめん。名門神族って、言ってしまえば貴族みたいなもんだろ? 許嫁とかそういうのがいたりすんのかなって」

「あ、ああ、そういうことね。いないわよ。うちは名門神族の中でも大きい部類だから、話は度々くるけどね。でもお断りしてるわ」


 名門神族の中でも大きい部類……

 そんな家にこんな突然入り込んでいいんだろうか……。


「クリエ姉様とリンネ姉様が手強いからって私を狙おうとする輩が多いのよ。本当嫌になるわ」

「お、おう。それはなんというか、大変だな」


 なんかこう言っちゃなんだけど。

 フィーネもちゃんと名門神族令嬢やってんだな……。

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