第150話 結界への神力奉仕という仕事
ランクB神族としての初仕事の日。
これから週3日、朝9時~17時、リエンカ家に――というより神界に仕えることになる。
「おはようございます、フォルテさん。今日からよろしくお願いします」
「おはよう、悠斗くん。こちらこそよろしくね。まずはざっくりとした仕事の流れを説明するわね」
「いろいろ考えたのだけど、悠斗くんはまだ仕事に慣れていないし、まずは重要なことからこなしていきましょう」
フォルテはそう、予定や簡単な説明が書かれた紙を手渡してくれた。
9:00~9:30 仕事の説明
10:00~11:00 結界への神力奉仕
11:00~11:15 休憩
11:15~13:00 書類仕事
13:00~14:00 昼休み
14:00~17:00 書類仕事 or 外回り
――拘束時間の割に休み時間多いな!?
というか、週3日なのに実働実質5時間45分しかないんだが?
「ふふ、短いって思った? あなたは元々、とても長い時間働いていたらしいものね。でもね、審査期間中に学んだでしょう?」
「――あ」
「そういうことよ。私たち神族は、無理して働けばいいってものじゃないの。私たちの1つ1つの行動や考え方、気持ちが世界の命運を左右するのよ。神族の力はとても強いけれど、とても繊細なの。そのことを肝に銘じておいてちょうだいね」
「は、はい……」
1つ1つの行動や考え方、気持ちが世界の命運を左右する、か。
そうだよな、神様――なんだもんな、オレ。
正直今でもうっかり忘れそうになるが、そこをきちんと自覚できて一人前だ。
そしてもう、一人前でないことは許されないところまできている。
――ちゃんと自覚しないと。
人間としての感覚を忘れないことと、その記憶に生きることは違う。
オレはもう人間ではないのだ。
「最初のうちは、新しい仕事は結界への神力奉仕だけにしておいたわ。ほかは審査期間中にやっていたことを引き続き担当してもらえるかしら。もう既に、またあなたに相談したいって話がたくさん来てるのよ」
「!? が、頑張ります……」
こんな転生者からの成り上がり神族でも、そんなふうに求めてもらえるのか。
嬉しいな。
「それじゃあ、神力奉仕を行なう部屋へ案内します。ついてきてちょうだい」
フォルテに案内された部屋は、大掛かりな術が展開されている真っ白で幻想的な空間だった。
部屋の床中央には魔法陣のような文様が光り輝き、そこに直径2mほどの巨大な水の柱が、まるでそこだけ重力というものが消失したかのように立っている。
その水柱は天井まで達しており、よく見ると表面は小さく波打っているが。
しかし流れ落ちる様子はまったくなく、水滴一滴すらこぼれない。
――お、おおう。
クリエさんのインストールで手法は分かる。分かるけど。
でもいざ目の前にするとこれは――
「クリエからの情報で分かると思うけれど、この中に入って、体を委ねるのよ」
「――い、息ってできますよね?」
「――え? っふふ、もちろんよ。この液体は特殊だけれど、そもそも神族は普通の水の中でも息できるわよ?」
俺の発言に意表をつかれたのか、フォルテはおかしそうにクスクス笑っている。
――というか水中でも息ができる……だと……!?
そんなのもっと早く教えてくれよおおおおおおお!!!
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