第144話 無自覚な天才って怖えええええ

「いや、え、オレまだ試験受けてないんですけど」

「うーん、そうなんだけどね~、でももう試験が終わっちゃったのよ」

「?????」

「ランクBへの昇格試験はねえ、神様活動への改善案を考えて、それを実行して成果を出すことなの」


 ――あ。


「うふふ、分かったかしら。この3か月で、リエンカ家が抱える神族たちの業績は右肩上がりよ。これだけの成果を出せたんだもの、ランクBへの昇格なんかじゃ足りないくらいだわ」

「そういうことよ。よかったわね。おめでとう」

「…………あ、ありがとうございます」


 これから昇格試験の受験資格を得て、受験して……と考えていただけに、なんだか気が抜けてしまった。


「それじゃあ、ランクBになった証の祝福を授けるわね~」

「え、あ、はい……え? 祝福?」

「ランクBより先はねえ、名門神族を除いてランクSの神族の祝福がなければなれないのよ~。それじゃあ、そこでじっとしていてね♪」


 クリエはオレの前に立ち、何やらよく分からない特殊な言語を唱え始めた。

 するとオレの足元に魔法陣のような不思議な模様が現れ、強い光を放ち始める。


 ――お、おお。

 なんかよく分からないけど、体に温かい何かが流れてくる。

 あとなんかよく分からないけどよく分からない膨大なデータがインストールされていくうううううう!!!

 なんだこれ!?

 これが祝福ってやつなのか!?


「はい、おしまいっ♪」

「――ありがとうございます。ええと、さっきなんか流れ込んできたんですが」

「祝福とともに、ランクBになるにあたって必要な情報を伝授したのよ~」


 便利だな!?

 というか昇格試験審査中に部屋にあった大量の本はなんだったんだ……。


「昔は本を読んで勉強して詰め込んでいたのよ~。でも本を見て詰め込むよりもちゃんと神界に目を向けてほしくて、このスタイルを提案したの」

「クリエさん――あ、いや、クリエ様が!?」

「そうよ~。あ、クリエさんでいいわよお。私なんて気がついたらランクSになっちゃってただけだもの。本当はもっと適任者がいるのにね~。どうして私なのかしら」


 ――な、なるほどこれは。


 クリエの言葉は、嫌味なんかじゃない。

 恐らく本当に自身の力に無自覚なのだろう。

 おまけに、こっちまで毒気を抜かれてしまうほどおっとりしている。


 こんな天才が姉だなんて、負けず嫌いなリンネにとっては地獄だな……。

 ずっとこんなのと自分を比較しながら生きてきたのか。


「……分かったでしょう。クリエがこんな感じなものだから」


 オレの心境を察したのか、フォルテもため息をつく。


「天才って怖いですね」

「んもう! なによ2人してっ! 私は全然怖くないです~っ! 私はただ、力を入れるべきところはそこじゃないかな~って思っただけよ。だからなんかいい感じに式を組んで、それを省略できるようにしたの!」


 いい感じに式を組んで、か。

 ――いやまあ、オレにはそれがどういう難易度のものなのか分からないけど。

 分からないけど、でも尋常じゃなさそうなことはフォルテの表情を見れば分かる。


 うん。

 無自覚な天才って怖ええええええええ!!!

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