第119話 今こそ社畜の力を見せるとき!?

 リンネとの通信を終えて暫くすると、ハクとフィーネが戻ってきた。


「ただいま!」

「ただいま戻りました」

「おお、おかえり。明日には家に帰る予定だけど、ゆっくりできたか?」

「はいっ」

「そうね。久々に休暇らしい休暇を満喫したわ」

「それはよかった。オレもゆっくり休めたよ」


 こうして3人でくつろいでると、なんだか子連れの夫婦みたいだn


 ――って何想像してんだオレ!

 子連れの夫婦ってなんだよ!!

 フィーネは違うから! そういうんじゃないから!!!


「? なんか変なこと考えてない?」

「考えてないっ!!」

「えー? 怪しいわね。妄想するなとは言わないけど、変なことしないでよ?」

「しねえよ! ――ってそんなことよりフィーネ、オレランクBになりたいんだけど、チャレンジしてもいいかな」

「……え!? え、どうしたの急に」


 フィーネは驚いたような、困ったような目でオレを見る。

 あまり乗り気――には見えないな。


「それはその……まあ理由はいろいろあるんだが、ここではちょっと」

「……あー、なるほどね。心配しなくても取り上げたりしないから安心なさい。まったく君は本当にハクが好きよね」

「!?!?」


 ジト目でため息をつくフィーネを見て、ハクは何の話だという顔でオレとフィーネの様子を伺っている。


「ハクのご主人様は、私にハクを取られるのが怖いのよ。だからランクBに昇格して、モフモフ所有の正式な権限を手に入れて、私からハクを買おうと思ったんじゃないかしら」

「え――」


 ――ぐ。

 こんな時ばっかり察しがいいの本当なんなんだ。


「そもそも。そんな邪な理由で目指して昇格できるほどランクBは甘くないわよ。それに受かって終わりじゃないの。馬鹿なこと考えるのはやめなさい。君は転生者としては奇跡的に優秀なんだから、それでいいじゃない」

「――いや。たしかにそれも大きな理由の1つだけど、でもそれだけじゃないんだ。オレは、自分でこの星をしっかり守れるようになりたい」

「……何かあったの?」


 ――あ。しまった。


「ああ、いや、そうじゃないけど。でも今後どうなるか分からないだろ。この星がもっと力を持ったら、狙ってくるヤツが現れるかもしれないし」

「……絶対にないとは言えないけど、でも可能性はかなり低いと思うわよ。そんなことをして万が一バレたら、家の責任になるもの。そのリスクが分からない馬鹿な神族はいないんじゃないかしら」


 いやいやお姉さんがまさにですね!?

 ――とはまあ、さすがに言えないし言いたくない。


「まあほらあれだ、上を目指したくなるのは別に普通のことだろ?」

「……はあ。まあ人族は欲深いって言うものね。そんなに言うなら、やるだけやってみるといいわ。昇格試験を受けるためには、名門神族の下について働きを認められなきゃいけないの。うちでいいかしら」

「あ、ああ、うん。むしろそれでお願いします」

「それじゃあ母様と父様に話をしてみるわ」

「助かるよ」


 こうしてフィーネはいったん自分の家へ戻り、旅館の部屋にはオレとハクだけになった。


「……僕も……と……たいです」

「うん?」

「い、いえっ! ランクB、なれるといいですね。応援してます」

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