第117話 モフモフ所有の条件は
目が覚めると、あたりはすっかり暗くなっていた。
窓から見える夜の世界は、あちこちに灯された灯りでによって幻想的な雰囲気に彩られている。
――ん? なんだこれ?
備えつけのテーブルに目をやると、「フィーネ様と一緒に温泉に入ってきます」という置き手紙が残されていた。
恐らく、一度様子を見に戻ってきたものの、オレが熟睡していたため再び時間を潰そうということになったのだろう。
あの2人も、だいぶ仲良くなったよな。
最初の頃は、フィーネはハクのことを神様アイテムとしか見てなかったし、ハクはフィーネがいるとただひたすら無言だった。
……まあハクの方は相変わらず無言に近い状態だけど。
それでもフィーネの対応が変わることで少しずつ変化もみられるかもしれない。
神様アイテムではあっても、ハクにはどう考えても感情があって、彼女なりに日々様々なことを考えながら生きている。
おまけに時折見せる、あの甘えたがりな一面。
ハクも本当は、アイテムではなく家族になりたいんじゃなかろうか。
でも、自分の立場を忘れてしまえるほど幼くはなく。
自分に明確な役割がある以上、それを守ることでしか存在を許されないと思っているのかもしれない。
――リンネさんに聞いてみようかな?
以前、たまに神様活動の相談に乗ってほしいと打診しておいたし、今後また余計なことをされないためにも、程よく巻き込んでおくのは必要なことだろう。
オレはステータス画面を開き、リンネとの接触を試みた。
『――ハルト君? どうしたの?』
「突然すみません。実は、リンネさんに相談があって」
『私に? 何かしら』
「――その、ハクのことなんですけど」
オレはリンネに、モフモフはどうやって生まれるのか、返却はいつなのか、ハクとずっと一緒にいる方法はないのかなど、気になることを聞いてみた。
『――はあ。フィーネは本当に何も話してないのね。まずモフモフは、というか神様アイテムは、ランクSの神族が創ってるの。だからハルト君のいうハクもそう』
ランクS――以前聞いた、名門神族のさらに上にいるっていう神族か。
『それで、このモフモフはランクB以上の神族、もしくは転生者しか使うことのできないアイテムなのよ』
「――え」
『まず、正式にモフモフを所有する権利があるのはランクB以上。神獣という力の強い生き物を使役するには、相応の実力と適性が必要になってくるからよ。神獣は神族に逆らえないから、使う側が使い方を誤ると大変なことになるわ』
――なるほど。
まあそりゃそうか。誰にでも渡せるような代物じゃないよな。
『そしてそれとは別に、特例措置として許されるのが転生者。転生者が突然神様になった場合、最初は右も左も分からない状態、ということになるでしょ。そこでそれを解消するために渡されるのがモフモフなの』
「じゃあハクはこっちってわけか」
『そう。でもこの転生者に渡されるモフモフは、ランクB以上の神族が責任を持って貸し与えるもので、転生者のものとして認められるわけじゃない。いずれ返却する、というのはそういうことよ』
それはつまり――
ハクの正式な所有者はオレではなくフィーネで、万が一のことがあればすべてフィーネの責任になるってことか。
あいつそんなこと一度も……。
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