第115話 世界のレイヤー分けってその発想はなかった

 オレとハク、フィーネは、この火山島内の施設を点々とし、温泉を網羅しながら3日間ほど滞在した。

 どの温泉も入り心地や温度、効能すべてにおいて素晴らしく、手入れもしっかりと行き届いていた。


「っはーっ! 気持ちよかった! だいぶ疲れが取れたわね!」

「おまえ普段疲れるほどのことしてないだろ……」

「失礼ね! 私だってそれなりに仕事してるわよっ!」


「本当、回復どころか力がみなぎっている気がします」

「ハクは働き者だし、疲れが溜まってたのかもな。いつもありがとな」

「ちょっと!? 私だけ扱いひどくない!? 私一応この中で一番えらいんですけど!?」

「気のせいだよ気にするな」


 人族も精霊も、ここをうまく活用して疲れを癒してくれるといいな。


 ――いやでも、人族と精霊が出くわすのはまずいのか?

 森精霊は人族に迫害された過去があるし、怖がって近寄れないかもしれない。


「なあ、ここを人族と精霊どっちもが楽しく利用できる方法はないか?」

「あ、そうそう。言おうと思ってたんだけど、人族と精霊は住んでる世界をレイヤー分けしておいた方がいいわよ」

「れ、レイヤー分け? ってなんだ?」


 レイヤー分けというのは、種族ごとに生活空間の次元を少しずらし、互いが鉢合わないようにする手法のことらしい。

 つまり、同じ時間に同じ空間にいるように見えても、実際は別の次元にいるということだ。


「そんな方法があるなら早く教えてくれよ……」

「言おうと思ってたんだけど、特に困ってなさそうだったからうっかりしてたわ。ごめんね☆ あ、ちなみに使うスキルは【神様】よ」


 本当こいつは!

 そういうとこだぞ!!!

 それなら最初からできたんじゃないかあああああああ!!!


 人族にも精霊にも、無駄に不便な生活をさせてしまった……。


「君がせめてランクBになれば、うちの家庭教師を紹介できるんだけど」

「転生者の管理は転生させた神様の仕事じゃなかったのか?」

「君、適材適所って言葉知ってる?」

「……自分で言うのか」


 教えるの向いてない自覚はあるんだな。


「本音を言うと、まさか君がこんなに優秀な神族に育つとは思わなかったのよ。こんなことなら、【何でもしてくれるモフモフ】じゃなくて【モフモフ先生】を渡すべきだったわ」


 フィーネはそうため息をつく。

 というか【モフモフ先生】ってなんだよ……。


「今からでも変更しようと思えばできるんだけど、規定で神獣は1人につき1体しか渡せないの。だから【モフモフ先生】を渡す場合は、ハクは回収することになるわ。でも君はそれは嫌でしょ? ハクのこと、とても可愛がってるものね。ハクも君にすごく懐いてるし」

「そうだな。それは困る」


 ハクの幸せそうな顔が見れなくなるくらいなら、効率なんて悪くたっていい。

 このラテスは、オレとハク(とフィーネ)の星だから。


「君は違う使い方をしてるけど、【何でもしてくれるモフモフ】は本来、こちら主導で使役するためのアイテムなのよ。君は前世で社畜だったし、どうせその反動でハーレムでも作って好き放題すると思ってたの。だからそれに合わせて選んだのよ」


 失礼にも程がある理由だな!!!

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