第114話 眠るハクを見て思う先のこと
結局、あのあと散々フィーネにからかわれながらも、わいわい温泉を楽しんだ。
まあゆったりとはいかなかったが、たまにはああいう賑やかな温泉もアリ――かもしれない。
でも、次はせめて水着か何かを着てほしい。
そんなこんなで、オレは今、旅館の客室に寝転がっている。
ハクとフィーネも同じ部屋で、2人は疲れたのか熟睡中だ。
2人とも(オレもだけど)備え付けの浴衣を着ているため、動くたびに脱げるんじゃないかとヒヤヒヤしてしまう。
「……むう」
ハクは何か夢を見ているのか、さっき寝返りを打った拍子にオレにしがみつき、そのままオレの足を枕にして眠っている。可愛い。
いつもはしっかりしてるし何かとよく働いてくれるけど、こうしてみるとただの子どもみたいだな。
実際は数千年以上は生きてるらしいけど。
こっちに来てから、本当にいろんなことがあった。
ハクに木を切り倒してもらってログハウスを作り、食料を生産して、熱した石の上で作った飯を食って。
よく分からないままポイントで家電を買い漁ったこともあったっけ。
それから精霊や人族を召喚して、みんなで村を作って、ダンジョンにもぐってドラゴンにも会った。
そしてそこには、いつもハクがいた。
分からないことがあれば丁寧に教えてくれて、困ったときはいつも助けてくれた。
精霊たちとこんなに良好な関係が保てているのも、間違いなくハクのおかげだ。
ハクの髪をそっと撫でると、わずかに耳をピコピコさせて気持ちよさそうにすり寄ってくる。
こいつ、実はめちゃくちゃ甘えたがりだよな。
この星の開拓が終わるころには、もう少し打ち解けて我儘を言ってくれるようになったりするのかな。
ハクにとっては、きっとオレと一緒に過ごした時間なんて一瞬のように短い、ほんのわずかな期間でしかない。
そう思うと、もっともっとハクと一緒にいたくなる。
ハクがうんざりするくらい可愛がって、心を満たして、オレという存在をしっかり刻みつけたい。
オレが一番のご主人様だって、大切な家族だって、そう思わせたい。
――でも、そこから先は? どうなるんだ?
オレはいったい何年くらい生きられるんだ?
実はオレも半永久的に生きられたりするのか?
以前チラッと聞いた話では、【何でもしてくれるモフモフ】は役目を果たすと卵に戻り、また次の主の元へと派遣されると言っていた。
つまりいつかは、ハクは違う神族、もしくは転生者の元へ行ってしまう――ということなのかもしれない。
というか役目ってなんだ?
いつまで? どこが終わりなんだ?
オレが死んだ時?
それとも、オレが一定以上の神族になった時点か?
次の主はハクをちゃんと大切にしてくれるのか?
ハクを見ていると、時折そんな不安がじわじわとオレの心を抉り始める。
オレも、神族としてもっともっと力をつけたい。
フィーネやハクに頼ってばかりじゃなく、オレが頼ってもらえるくらいになりたい。
そのためには、いざという時に戦える力も必要だろう。
今後また、リンネみたいな騒動を起こす神が現れないとも限らない。
万が一そうなったとき、少しでも自分で立ち向かえるようにしておきたい。
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