第113話 ゆっくり温泉――なんて無理に決まってた
「……ちなみにハク、もしかしてそのタオルも体の一部だったり?」
「いえ、これは外れますよ」
ハクはそう、体に巻き付けていたバスタオルの端に手をかけ――
「って待て! いや、うん、そうだよな。分かった。だからそのままで!」
「? は、はい」
ハクは訳が分からない様子でぽかんとしつつ、バスタオルから手を放した。
フィーネはそんなオレとハクのやり取りをしばらく観察していたが、飽きたのかこちら――湯船がある方へ向かってきた。
「ハク、こんな変態は放っておいて、温泉を楽しむわよ」
「? え、ええと」
「――っておいちょっと待て。シャワー浴びてから入れよ」
「? どうして?」
「お湯が汚れるだろ。温泉入ったことないのかおまえら。まずはそこのシャワーで髪と体を洗って、それから入るんだよ」
神界には温泉というものがないんだろうか?
そう思ったが。
「失礼ね! 浄化はされても汚れたりしないわよ人族じゃあるまいしっ!」
「いやいや、ここに来るまでに土とか埃とかついてんだろ」
「そんなの脱衣所で浄化してきてるに決まってるでしょっ!?」
えええええええ。
だ、脱衣所で浄化ってどんな常識だよそれ……。
「まったく相変わらず人族の習慣が抜けない男ね君は。いい? 神族には、自らを浄化する機能が備わってるのよ。というか存在が浄化装置みたいなものなの!」
「存在が浄化装置」
なんだそのパワーワード。
「ハクにもその機能があるのか?」
「はい、ありますよ。ご主人様にもあります」
「ま、まじか……」
今まで髪洗って体洗ってたの何だったんだ……。
言われてみれば、正式な神族になってからはトイレにも行っていない。
普通に食ってるのに何かがおかしいとは思ってた。思ってたけど。
でも特にいきたいとも思わないし、何となくこの2人には聞きづらくて見て見ぬふりしてたんだよな……。
「神族の体ってあれだな、ブラックホールみたいだな……」
「まあ半分精神体みたいなものだしね」
「せ、精神体……」
外見は前世とほぼ変わらないのに、まさかそんな存在になってたなんて。
そりゃあ体がどうとか男とか女とか、どうでもよくなってくるよな。多分。
…………多分。
オレは改めて、フィーネとハクに目を向ける。
フィーネはそれなりに、というかかなりバランスのいいしなやかな体つきで、うっかりその白く艶やかな肌感と曲線美から目が離せなくなってしまいそうになる。
そしてハクは――体型は細めでいわゆる幼児体型ではあるものの、絹のような美しい肌からは色気の片鱗のようなものを感じて――
って変なこと考えるなオレええええええええええええええええええ!!!
やっぱりどう考えたってエロいだろ!
精神体? そんなの知らんわ!!! 無理!!!
だってこんな美少女2人がバスタオル1枚だぞ?
しかもなんか髪の毛アップにしてるせいでうなじが見えて、温泉の蒸気で肌も湿って、頬も心なしか紅潮していて――
「……君、今私たちのこと変な目で見てたでしょ」
「み、見てねえよ!」
「嘘ばっかり! 顔に書いてあるわよこの変態っ」
「そんな格好で現れるおまえらが悪いんだろ!?」
「!? え、ご、ごめんなさい……」
「ああ、いや、今のはハクに言ったんじゃなくてだな!?」
ああもう!
ゆっくり温泉に浸かれるぞー!なんて気楽な気持ちで来たオレが間違いだった。
やっぱりフィーネは置いてくるべきだった。
このメンバーでそんなの無理に決まってるだろおおおおおおお!!!
くっころ!!!!!
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