第111話 神族は混浴なんて気にしない!?

 温泉づくりの話をしてから約2か月後。

 ついに温泉とその周辺施設が完成したと連絡が入った。


 初回は万が一何か問題があった時のことを考えて、オレとハク2人、それからフィーネの3人で行くことにした。


「――というかおい」

「何?」

「なんでおまえまで来てるんだ? オレの神様活動には干渉しない主義なんじゃなかったっけ?」

「いいじゃないべつに。口出しはしないわよ」


 ――もしかして、フィーネも温泉に入りたいのか?

 さっきからなんかやたらとソワソワしてるし。

 それならそうと言ってくれればいいのに。


「ここの温泉、全部で5種類あるけど、そのうち3つは混浴だぞ?」

「それで?」

「え……いや、それで、って、おまえオレと風呂に入るの嫌じゃないのか? ……それとも、もしかしておまえも服と一体型なのか?」


 そういえばフィーネもいつも同じような服を着ている気がする。

 白い肌と金色の髪、緑色の美しい目という色素の薄さに白いワンピースがよく映えると常々うっかり見てしまうから確かなことだ。

 本当に、見た目だけは絶世の美女なのだ。見た目だけは。


「……はあ? 何馬鹿なこと言ってるのよ。そんなわけないでしょ。服と一体型ってどういうことよ」

「いや、ハクの服は毛皮の一部らしくてな」

「……君、私を怒らせたいの? 私に服を生成できるほどふっさふさの体毛なんてないわよっ!」


 どうやら何か言ってはいけないことを言ってしまったらしい。

 べつに体毛がどうとかそんな話をしたつもりはないのに!!!


「い、いや、言いたいのはそこじゃなくてだな。オレに裸を見られて平気なのかってことなんだけど」

「? 私はべつに気にしないけど。世話してくれる天使にも見られてたし」

「その天使には男も含まれるのか?」

「いることもあるわね。……なあに? もしかして君、私の裸を見たら欲情しちゃう、なんて考えてる? 中級神族の分際で1000年は早いわね」


 フィーネは失笑し、呆れたようにため息をつく。


 ――っくっ! こいつ!


「じゃあ好きにしろよっ」

「心配しなくても、タオルを巻いて入るから平気よ」


 それで万事解決だと思ってるのがすごいな!

 むしろ逆にエロいわ!!!


「そもそも、男か女かなんてそんなに重要なことなの?」

「えええ。いや、じゅ、重要……だろ? 重要じゃないのか? え?」


 まさかそんな根本的なところから感覚に相違があるとは思わなかった。

 でもたしか、ハクも出会った当初性別が判明した際、「どちらかと言えばそんな感じです」と軽く流していた気がする。


「神界ではさほど重要視されないわね。神族は基本的に人族ほど3大欲求も強くないし、裸がどうとか男とか女とか、そういう感覚はあまりないのよ」

「へ、へえ。すごい種族なんだな」

「? ふふ、そりゃあそうよ! 神族は全種族の中で最上位に位置する種族だもの」


 ――いや、今の「すごい」はべつに褒めたわけじゃなかったんだが。

 しかもちょっと意味分かってなさそうだし。

 まあでも、得意げにドヤ顔してる中訂正するほどのことでもないか。


 オレはどこか残念な最上位種フィーネのことは諦めて、目の前の温泉に目を向けることにした。

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